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70歳のおばあちゃんが90歳のおばあちゃんを乗せて運転する現実がある。究極の公共交通は”乗せあいっこ”ではないか

過疎の町、利賀村で公共交通の課題に取り組んでいる宮下氏の言葉です。

買い物・病院・学校など生活のほぼ全ては個人が移動できることを前提に社会は組み立てられています。しかし、急速な少子高齢化の時代をむかえて、毎日の足をになう公共交通インフラがぐらつく場所も出てきました。
シビックテックはテクノロジーを用いて身の回りや地域課題を解決する活動ですが、社会インフラである公共交通の課題解決には行政側の参加も必要不可欠です。少子高齢化に向かう日本では、まちづくりの提案などとセットとなって公共交通問題が扱われてきています。


セッションの背景

「CIVIC TECH FORUM 2017」でとりあげる三本柱のうち公共セクターのインタラクティブセッションとしては、「21世紀の公共交通(モビリティ)について考える」として、公共交通を扱いました。登壇者は以下の方々にお願いしました。
・伊藤昌毅氏(東京大学 生産技術研究所 附属ソシオグローバル情報工学研究センター 助教)
・齊藤啓輔氏(北海道天塩町副町長)
・宮下直子氏(利賀地域ふるさと推進協議会、Code for Nanto)
・名田雅希氏(つくば市企画部総合交通政策課交通政策係主査)

公共交通を考えることは、街づくりを考える事、ひいては自分たちがどう暮らしていきたいのかを考えることにつながります。この課題にテクノロジーを用いて、どのような解を見いだせるのか。その興味からセッションが企画されました。

前半45分はご登壇者からのショートインプット、後半45分が会場をまじえてのインタラクティブトークという構成です。
伊藤氏は公共交通情報のオープンデータ化・海外先端事例の有識者として、斎藤氏には北海道天塩町におけるライドシェアnottecoについて、宮下氏には富山県南砺市でUberやライドシェアあいあい自動車の取組を、名田氏にはつくばモビリティ・交通研究会などスマートシティつくばにおける取組のお話をしていただきました。


オープンデータで公共交通を「自分ごと」にしよう

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ITと公共交通をかけあわせることで何が出来るかという視点で、公共交通に関するオープンデータの重要性、特に標準であるGTFS規格についてご紹介いただきました。交通サービスを提供する事業者側と利用者がともに情報を循環させるサイクルがある未来、公共交通を「自分ごと」として考える姿勢が大切だということです。 →プレゼン資料

北海道天塩町におけるライドシェアnottecoについてご紹介

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北海道最北端の稚内市から南西へ70キロ、人口3000人の北海道天塩町では都会と公共交通(モビリティ)が圧倒的に違います。クルマで1時間の距離のところまで往復するだけなのに、公共交通がほとんどないために一泊しなければならないという現実があります。状況を改善し生活圏の足を確保するために、自治体としては日本初nottecoサービスの共同実証事業を開始しました。現実になかなか追いつかない法律規制の中で工夫しているお話をいただきました。
当日は、斎藤副町長とともに、notteco代表取締役社長の東祐太郎氏にもお話いただきました。


富山県南砺市利賀村でのライドシェア取組

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豪雪地帯で合掌造りでも有名な利賀村も過疎であることにかわりはありません。主に高齢市民の足を確保するために行政が提供している相乗りバス運用では多額の赤字が出ており、サービスの持続性に問題があります。課題を解決するためにこれまでにもハッカソンなどの数々の取り組みを行い、現在は利賀地域ふるさと推進協議会を主体としてライドシェアサービスの実現に取り組もうとしています。将来的には観光客も対象にしたいという構想も持っています。


つくば市における交通まちづくり

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天塩町、南砺市利賀村とは違いつくばTX開通以来、人口の急増が続くつくば市。市内中心部の混雑を減らし、バランスのとれた街づくりの一環として公共交通の計画をされています。幹線交通をになう交通に加え、高齢化社会に対応するべく支線交通の充実をねらいコミュニティバスとデマンドタクシーサービスを提供しました。利用者としては高齢者および障害をお持ちの方が多いということ。また、ICカードからのトラフィックデータ(ビッグデータ)などを活用した、将来プランの策定や交通以外の街づくりへの応用を考えられています。
当日は、名田氏とともに、つくば市まちづくり推進部部長・長島芳行氏にもお話いただきました。


インタラクティブトーク

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後半45分間は、登壇者の方々および会場参加者からの質疑応答などを中心に議論を行うインタラクティブトークです。

まずは「登壇者にとっての公共交通とは何か?」という問から始まり、次に自治体サイズの違いにより使える予算の話(年間予算の0.5%程度)や法律規制関係の話に移り、各地域での取り組み時の苦労が話されました。
その中で、「公共交通は地域によって議論の土壌がまるで違う」という指摘もありました。

公共交通のオープンデータ活用では、「プライバシーとのすりあわせが非常に難しいのが現状」だというところから、「いかにこの状況を変えていくか」というアイデアが話されました。
・プライバシーを守りながらもデータを有効に活用するシステム間の連携をすることは出来るはず
・プライバシーにかかわらないデータでも有効に活用できるやり方がいくらでもあるのではないか
と、参加者からも意見が出ました。

プライバシーのすりあわせをシビックテック的なアプローチで可能にできないかという点について、
「交通分野ではシビックテックと呼ぶ以前からも”くらしの足をみんなで考える全国フォーラム”のようなアプローチがあったので、シビックテック分野とのコミュニティ分断が課題だ」とのことです。

なお、行政サイドとしては地元の方々から要望が寄せられてバス路線を追加したとしても実際は乗ってもらえないという、「要望と実際のジレンマ」が語られました。それに加え、参加されている自治体関係者からは、「オープンデータを公開する際の費用についても負担である」という悩みも共有されました。

話題はつきないインタラクティブトークですが、ここでタイムアップ。
公共交通分野については法律や社会制度の変遷が必要なので、テクノロジーを活用しつつも、あらゆる人が自分ごととして継続的に声を出していくことが大切というところに着地しました。


講演のつぶやきまとめはこちらから。臨場感あるので別の角度から講演を知ることができます。
togetter(つぶやきまとめ)


グラフィックレコーティング

こちらの講演のグラレコ(by 前半: 松井大さん 後半:山野元樹さん)です。
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講演動画

ご興味をもってくださった方は、記事にしきれなかった部分もありますので、是非講演動画もご覧ください。




著者プロフィール:柴田重臣
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ネットワークエンジニア。Code for Ibaraki メンバー、CIVIC TECH FORUM 2016運営委員長。Code for Japan設立時にリサーチチームとして参加。米国CfA summmit, Personal democracy forumや台湾 g0v summit へ参加するなど海外シビックテック事例についても研究している。Code for IbarakiメンバーとしてシビックテックカフェやCoderDojo Mitoなどいくつかのプロジェクトに携わっている。