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こちらのセッションのモデレータを務めた黒井さんに寄稿いただきました。

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「小さくても、実績があれば行政(出資者)と同じ目線で話ができるようになる。目線がそろうと、継続的になっていく(村上氏)」

この言葉は、今回のセッションで一番印象に残った言葉です。
「コミュニティ運営のためのお金」の話をすると、どうしても「いかにお金を集めるか」が語られがちですが、ここで全体を包括していたのは、出資者である立場の人と実施者である自分たちとの目線をそろえるという冒頭のキーワード。

助成金や補助金、クラウドファンディング、会費・寄付、物販、さらには行政からの業務委託まで、お金を集める方法はいろいろあります。どのスタイルが自分たちに合っているのかを見極めるのは大切です。
ただ、スタイルに関係なく、スタート地点で必要なのは、小さくてもいいので「実績」。それが、「お金を出す側・もらう側の関係性」から、「共に考える・動く関係性」に高めてくれるとても重要なことなのです。
さらに、その関係性がコミュニティの持続可能性(金銭面のみではない)へとつながっていくはずです。


セッションの背景

CIVIC TECH FORUM 2017」の市民コミュニティセクターのインタラクティブステージでのセッションの一つは「コミュニティ運営のやりくり 」というテーマ。
筆者である私(黒井)がモデレータを務め、福岡のNPO「AIP」の理事で、LOCAL GOOD FUKUOKAを運営する村上純志氏をゲストにお話を伺いつつ、会場からもアイデアをもらい進行しました。
LOCAL GOOD FUKUOKAは、サービス、モノ、カネ、ヒト、情報の循環を作り、地域をよくする様々なプロジェクトに市民、企業が参加するきっかけを作る活動をしています。
・ゲスト:村上純志氏(NPO法人AIP 理事/LOCAL GOOD FUKUOKA主宰)
・モデレータ:黒井理恵(株式会社DKdo 代表取締役)

活動をはじめ、推進していくと、必ずコストが発生します。最初は手弁当で、ボランティアでも大丈夫!と思ったとしても、活動を継続しようとすると、そのスタイルは健全とは言えません。コミュニティの継続性と資金調達は切っても切れない関係性。
このセッションでは、そんな「お金」とその周辺にある「コミュニティ運営」について、スタートアップの時、継続的にコミュニティを運営させるとき、、、それぞれのフェーズや規模に合わせて、資金調達の手法としてどんな方法があるのかをピックアップし、さらに資金調達の際に気を付けなければならないことやコツなどを話したいと思い、構成しました。


クラウドファンディングの成功ポイントは友達1000人?!

スタートアップの際によく利用されるクラウドファンディング。しかし、知らない人への出資はまだまだハードルが高いのが日本の現状です。
クラウドファンディング「Readyfor」を利用して150万円余りを集めて成立したものの、出資者の99%はプロジェクト提起者の友人という、私の事例も紹介しました。
ずばり、クラウドファンディングの成功の秘訣は、「友達が1000人以上いるかいないか」。そして、「自分の日頃の行い(自分がどれだけクラウドファンディングで支援したかどうか)」だと思っています。

そして、会場からは「それであれば、わざわざ手数料を払ってまでクラウドファンディングを利用しなくてもいいのではないか」という質問もでました。
クラウドファンディングは、友人も含む不特定多数の人が出資しやすい決済システムというメリットのほかに、本当に重要な事はこの部分なのです。
「プロジェクトや背景にある社会課題を広く知ってもらう」といったPRの要素や、「出資者間のコミュニティづくり」などの目的もあるんです(黒井)

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また、クラウドファンディングは立ち上げには向いていますが、信用の切り売りなので継続には向いていないと思っています。


まずは小さく実績をつくる。行政や企業からの資金調達はそれから

スタートアップの時には熱い想いが先行して、大きくやろうとしがちです。大きくやろうとするとお金もそれなりに必要になりますが、実績がないと行政も企業も、地域の人もサポートしづらいのです。
例えばイベントをやるにしても、地方では人集めから苦労します。大きくやろうとすると、その苦労と「思い描いていた絵と現実は違う」というギャップも大きくなり、心が折れてしまうことが多々あります。
まずは小さく始めて、実績はもとより人間関係や経験値、情報を集めていくことをオススメします。

まだなにも活動していないのに、「行政だったら補助金がもらえるかも」という方がいます。しかし、実績もなにもないところにはお金は出しにくいのは、企業も行政も同じです。さらにいうと、うまくお金をもらえたとしても、その時の出資者(企業または行政)と団体の関係は対等ではなくなります。どうしても、お金を出してくれる側の立場が上になります。
小さくても、実績があれば行政と同じ目線で話ができるようになる。目線がそろうと、継続的になっていく(村上氏)

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小さくても実績を積み重ねていけば、行政や企業などの出資者と対等に話せるようになります。
こうして目線がそろうと、行政側から相談を受けたり、補助金や助成金を紹介してもらったりでき、組織に継続性が生まれていきます。



資金の調達、あれこれ

小さく始めるときには、お金よりも身の回りにあるリソースを最大限活用する工夫や視点の大切さも語られました。
お金も大切だが、お金がかからない方法を考えることも大切(黒井)

例えば、イベントの会場を無償提供してくれるメンバーの勤め先はないか。スポンサーとして物資を提供してくれる企業はないかなどです。
そこから、会場内からさまざまな資金調達方法について挙げていただき、プロットしていきました。

始めやすさ、やりにくさ、スタートアップ時に有効、継続運営に有効という軸から、さらに「始めやすいが実際には集めにくい」といったものもあり、それらを見える化しています。
「業務委託」については、いくつかの質問や注意点が挙がりました。企業と同じで、自組織のミッションと外れる業務を受託し始めると、本来やるべきことができなくなるため注意が必要です。
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資金調達に奇策はナシ!関係から生まれる「ヒト・モノ・カネ」を大切に

何度か出ていたキーワードは「小さく始め、コツコツ続けること」。
実績がある程度作られた段階で行政や企業へのアプローチをしていくと、資金調達だけではなく、同じ目線で活動できる仲間が増えていくのだと思います。「仲間づくり」は資金調達にかかわらず大切なこと。

「ネット上のやりとりだけではなく、月に1回リアルで会う場を作る (村上氏)」
「 ”セミオープン” なコミュニティづくりを意識する。ちょっとだけ開いている ”間” に、誰でも気軽に参加できるイベントは有効(黒井)」
など、仲間づくりで意識していることについても話題が及びました。

その中で、コミュニティ運営において大切なエッセンスが詰まった言葉を聞くことができました。
一人の意思や感情だけでつぶれてしまうコミュニティは、コミュニティとは呼べないかもしれません。組織のミッションがはっきりしていれば、感情によるトップダウンにはならないはず(村上氏)

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仲間と楽しくやるのは当然ですが、どんな組織でありたいか、社会にどんな価値を提供したいのか、しっかり話す機会を意識的に作っていくことが、持続可能な組織づくりにつながっていくのでしょう。


講演のつぶやきまとめはこちらから。臨場感あるので別の角度から講演を知ることができます。
togetter(つぶやきまとめ)



グラフィックレコーディング


こちらの講演のグラレコ(by モトゾノダイスケさん)です。
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講演動画


ご興味をもってくださった方は、記事にしきれなかった部分もありますので、是非講演動画もご覧ください。





著者プロフィール:黒井理恵
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北海道名寄市在住。東京と北海道をつなげる(株)DKdo代表取締役。北海道の課題を東京在住の北海道出身者が解決する「北海道DAY」プロジェクトを運営。2014年に東京からUターンし、地元でコミュニティスペースも運営。市民対話の場づくりなどファシリテーターとしても活動中。