エンジニア色の濃いCode for Nagoyaが初めてパソコンNGのイベントを開催。普段参加しない層が参加してくれたり、コミュニケーションの大切さに改めて気付かされたりと、とても気付きが多いイベントとなったようです。企画者の一人である宮内さんが「是非他の地域の方にも紹介したい」とのことでしたので寄稿いただきました。(鈴木まなみ)
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話を聴き合うことでコミュニケーションを生み、その内容の絵を見ながら話すことで更にコミュニケーションが深まり、笑顔が生まれたワークショップ
東京のシビックテックイベントで目にする機会が多くなってきた「グラフィックレコーディング(以下:グラレコ)」。
カンファレンスや議論の流れをリアルタイムに文字やイラストで視覚化することで、その後の振り返りやその場にいなかった人にわかりやすく伝えることができる手法です。
とはいえ、東海ではまだグラレコに対する認知度は関東ほど高くなく、グラフィックレコーダーも少ない状況です。そのためCode for Nagoyaでは、
ーグラレコを知ってもらいたい
ー自分たちも描けるようになりたい
という気持ちから、関東を中心にグラレコ活動を行っている松井大さんを講師にお迎え、グラレコのワークショップを開催しました。
→グラフィックレコーディングワークショップ入門編 in 名古屋
結果として普段はエンジニアが多いCode for Nagoyaのイベントとは異なり、デザイナーさんや、そもそもCode for Nagoyaを知らない、という方にも多くご参加頂くことができました。
また、松井さんのワークショップは、体験型で非常にわかりやすく、何より参加者の方達がとても楽しそうで、これはぜひ他の地域の方にもご紹介したいと思ったことがこの記事を書くモチベーションになっています。
▶体験型グラレコワークショップ「習うより慣れろ!」
ワークショップは次の3つのワークに分けて行われました。「私もグラレコしてみたい」と思った時に気になることが順々に解説されていくプログラムです。
1.絵ゴコロないけど描けますか?
2.ドコからどう描いたらイイですか?
3.追いつけなーい 絵を描くヨユウなーい
本記事でも上記3つのパートに分けてご紹介します。
<1.絵ゴコロないけど描けますか?>
グラレコを学ぶ上でまず気になるのは「私は絵が描けないからグラレコできないんじゃないか?」ということ。そんなことありません。絵を描くポイントさえ掴んでしまえば誰でも描けます。
それを体験しながら学んでいきました。
最初は、あるキャラクターについて「うろ覚えで描いてみましょう」というワークが行われました。
(何が書かれているかわかりますか?)
このワークで参加者は「そのキャラクターについてそもそも覚えていなければ上手に描くことはできない」「そのキャラクターについて覚えていれば、より上手に描くことができる」ということを体験し、絵を描くためにはまず
ー対象を記憶していることが大事
であることが伝えられました。
次に、イラストは「バランスが大事」ということでまずは顔、次に体のバランスの整え方についてのお話です。様々な表情を描き分ける様子を松井さんが実演しながら解説してくれました。
また、グラフィックレコーディングでよく描かれる星形の人(スターマン)のご紹介もあり「これなら描けるかも!」となったところで、参加者同士で二人ペアになり、お互いに自己紹介しながらグラフィックレコーディングの練習です。
このワークを通し、
ー対象を観察して記憶し、バランスが取れていれば絵はそれっぽく見える
ーよく使うイラスト(スターマンのような)についてはストックしておく
といった、「絵を描く」ことのポイントを学びました。
参加者の皆さんはテーブル内での自己紹介もあり、初めてのグラレコ演習も終わったことで、最初よりも緊張感が解けてきたように思えます。
<2.ドコからどう描いたらイイですか?>
2つ目のワークは、「どうやって一枚の模造紙を余すことなく議論を書き留めているんだろう?」
という疑問に対するワークです。
議論が時系列をもっている場合(例:セミナー形式などの場合)には以下のようなことを意識すると良いそうです。
ースタートとゴールが記録しておく
ー時間の流れを意識し、過去は左で下向き、未来は右に向かって上向きで描く
ーPREPなどのプレゼン手法を仕入れておく
そして、議論などの様々な意見が発散される場合には、時系列がないので、中心にテーマを描いて周りに話題を描くスタイルが紹介されました。
補足として、「迷ったら右から描け」という言葉の紹介もあり、実際に松井さんも右下から描くこともあるとのこと。
グラレコは、ケースバイケースで描き方が変わり、決まった型があるわけではないようです。
このワークの総括として、「年末までに達成したいことは?」というテーマで、再度参加者同士でペアになってワークを行いました。そして描いたら相手にフィードバック。
自分の話したことが可視化されることでより明確になったのではないでしょうか?
<3.追いつけなーい 絵を描くヨユウなーい>
最後は実際にグラレコをするワークです。グラレコを見て「すごいスピードで描いてるけどどうやってるんだろう」と思ったことはありませんか?
リアルタイムに文字やイラストで視覚化するためには、「聴く」「イメージする」「描く」など、同時にいくつものことをこなすのは大変なので、「同時にやることを2つに絞る」方法が紹介されました。
例えば「聴く」と「イメージする」を同時にやっている間は「描く」ことはお休みし、「描く」ときは「聴く」けど「イメージする」はやらないということです。
また、事前準備は大切で「先にやれることはやっておく」方法が紹介されました。
例:講演の際は先に決まっているタイトルを描いておく
例:講演者の名前を描いておく
そして何より大事なことではないかと感じたのは「グラレコはスポーツと一緒」という松井さんの言葉です。習うより慣れろで、「描きながら聴くこと」を当たり前に、無意識にできることを増やすことが上達への道のりのようです。
ということで、ここからまた体験です。
TEDトークの動画を聞きながら、実際にグラレコするというワークが行われました。
これまでのワークでは相手に話を聴きながら描くという作業であったため、よくわからないことは聞き直すことができましたが、今回は動画であるため実際のグラレコのように聞き直すことはできません。
皆さん真剣に動画を見て、聴いてグラレコを描いていました。
以上で、今回のワークショップは終了です。
▶イベント概要
今回講師にお迎えした松井さんは、今まで関東を中心に活動されていました。しかし最近は、CIVIC TECH FORUM@東海のグラレコで協力を頂いたり、Code for Nagoyaのミーティングでもグラレコをして頂いたりと、東海圏にも活動の場を広げています。
ワークショップの様子は松永奈菜さんにグラレコして頂き、村木玲子さんにアシスタントを務めて頂きました。
参加者の皆さんにはワークショップで使うノートとペン、松井さんによる手書きのテキストが配られました。これらは家に帰ってからも練習できるように全員に一人一セット持ち帰り頂くものとなっていました。(僕も欲しかった・・・)
▶今回の振り返り
Code for Nagoyaでは今までハッカソンやアイデアソン、ワークショップを開催してきましたが、どれも基本的にはエンジニア要素が強く、パソコンを使うものがほとんどでした。
しかし今回はパソコンではなく紙とペンを使い「パソコンは使用不可」という、Code for Nagoyaとしては異色のイベントでノウハウもありません。
「どうなるんだろう?」という期待が不安の中、イベントページを公開するとあっという間に満席になり、当日は参加者の皆さんの笑顔が多かったのが印象的でした。
それは、グラフィックレコーディングが「人の話を聴く」というコミュニケーションを主体とした手法である点が大きいような気がします。
参加者同士が話を聴き合うことによりコミュニケーションが生まれ、話した内容を絵にし、その絵を見ながら話すことで更にそのコミュニケーションが深まり、笑顔が生まれる。
これらは講師の松井さんのイベント設計や人柄によるところはもちろんですが、「グラフィックレコーディング」そのものの魅力の一つなのではないかと思います。
このイベントの様子はtogetterにもまとめられていますので、そちらもご覧ください。より臨場感が感じられるかと思います。
→http://togetter.com/li/1010844
著者プロフィール:宮内はじめ(@miyauchi)
Code for Nagoya名誉代表/E2D3 Nagoya Branch Leader。