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金も出すが手も口も出す!?新しい地域における循環システム

2010年にイギリスで始まったソーシャルインパクトボンド(SIB)を取り扱った本セッションにおいて、滋賀県東近江市で始まった補助金改革型のSIBについて触れた鴨崎氏の発言には、今後地域の社会課題を解決していくためのヒントが隠されていたように思います。

自分が出した10万円が、地域の事業を始める若者にいっている。
地域の関係性の中でお金だけではなく手も口も出す。一緒に社会課題を解決していこうと参加をしていく。資金循環を生みだしながら社会課題を解決していくための1つの答えになるかもしれない。


セッションの背景

CIVIC TECH FORUM 2017」の基調講演の一つのテーマは、「インパクトを生みだすためのこれからの社会システム」でこちらのお二人に登壇いただきました。
・鴨崎 貴泰氏(日本ファンドレイジング協会 事務局長)
 インタビュワー:江口 晋太朗氏(編集者 / TOKYObeta Ltd. 代表取締役)

既存の行政サービス等ではケアをしきれなくなった社会課題に対し、新しい解決方法として期待されるソーシャルインパクトボンド(以下SIB)。シビックテック活動においても活用できる仕組みだと思い、旗振り役の一人として活動をされる鴨崎氏に登壇をお願いしました。
日本ではまだ産声をあげたばかりのその仕組の解説と、日本の制度・文化に合わせた取り組み・最新事例等について、共有をいただきました。

前半は鴨崎氏からSIBについての解説を、後半は江口氏が講演内容をインタビューする形で構成し、講演だけではわからない内容にまで触れていただきました。
本稿ではセッションに沿って、SIBの概要から取り上げた後に対談内容を要約しお届けいたします。


ソーシャルインパクトボンド(SIB)とは

ソーシャルインパクトボンドは、2010年にイギリスではじまった民間資金を活用した官民連携による社会課題解決の仕組みです。「ボンド」という名称より、債権ととらえられがちですがエクイティ(株主資本)が主。「投資なのか?と聞かれるが投資です。ただ、経済的なリターンを求めるだけではなく、社会的成果も求められる投資」と鴨崎氏より紹介されました。

<SIBが誕生した背景>
債務残高が高い(GDP比で110%)という課題があった当時のイギリス政府は、4年間10兆円以上の予算削減を号令し、財政支出と行政サービスを縮小していきました。結果、社会課題の増加につながり、財政支出を抑制しながら課題の解決をしていく必要性に迫られ誕生したとのこと。
「日本の背景と似ていいますね。」と付け加えられました。
日本では2011年当時209%であったGDP比の債務残高は2016年には232%を超えています。
(注:国債の購入先が英国とは異なるので、当時の英国の倍のリスクがあるというわけではありません)
※参考:財務省発表による「債務残高の国際比較(対GDP比)」

世界におけるSIBの状況はどうなっているのかというと、現在15カ国、65カ国組成されており、200億円以上投融資がされていますが、まだまだマーケットとしては小さいです。しかし、現在100件以上も準備が進んでおり、世界で注目されています。

<SIBの仕組み>
以下より、鴨崎氏の資料を抜粋をする形でSIBの仕組みに触れてみたいと思います。

・SIBの仕組み
民間資金提供者が資金を提供 → 生産性の高い社会的課題を解決するサービスをNPOやベンチャー等が提供 → アウトカム(結果)を第三者機関が評価をし行政に報告 → 成果が出たとみなした場合のみ、行政は報酬を支払う
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・SIBの特徴
〇業の結果に着目する成果(変化)を評価
行政と成果連動した支払い契約を締結
サービスが失敗するリスクは民間の資金提供者が負う

・SIBステークホルダーのメリット
民間資金提供者:リスクを負う代わりに成功の際は金銭的リターンを得る事ができる
サービス提供者:既存の仕組みでは得られにくい資金をもって事業に取り組める
     行政:導入リスクを抑えイノベーティブな仕組みの社会実装に挑戦できる
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・SIBを活用した際のお金の動き
例えば、行政サイドで今まで1億円かかっていた事業に対し、なんらかの革新的なサービスを提供することでコストが7千万円程減ったとした場合、中間コストを支払っても純粋に行政コストを削減させることができます。
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・国内の事例一覧
日本でも実証事業6件、本格導入1件等と具体的なパイロットプログラムが実施されています。
特に児童養護、若者就労、認知症、がん検診、糖尿病、地域共生等の課題領域がSIBに向いているだろうと考えられています。
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日本発!金も出すが手も口も出す!地域密着型SIB


続いて、面白いケーススタディとして、滋賀県東尾近江市で行わている補助金改革型SIBについて鴨崎氏より紹介を頂きました。

<滋賀県東近江市の補助金改革型のSIB>
もともと東近江市ではコミュニティビジネスを支援する制度があり、200万円の助成金をだしていました。ただ、助成金型ではお金を出した後の成果が追いにくいとのことで、成果連動型のSIB型で計画が進んでいきました。
特徴的なのは、この200万の資金調達を地域の住民から一口数万円にて募る私募債型で進めたということ。
通常は金融機関、投資家等が資金提供者となります。しかし、東近江市の例では、中間支援組織が投資信託の私募債という形で市民から小口の出資を募り、成果が出れば2%をつけて払い戻す形でSIBが組成されました。
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実際、200万の私募債は2週間足らずで集まり、1件50万円で地元の木材を使ったおもちゃ、食用油からつくる環境に優しいせっけんの製造販売等、4事業に対し投資がされたとのことです。
そして、何が起こっているのかというと、お金も出すが、口も手も出すという状況。
地域のおじさん達が視察にいき、口をだし、手を出し、一緒に商品を作り始めているそうです。
地域の関係性の中で手も口も出す一緒に社会課題を解決していこうと参加をしていく。
資金循環を生みだす、社会課題を解決していくための1つの答えになるかもしれない。

と、講演を締めくくられました。


これからの社会システムのために


後半は編集者 江口氏がインタビュアーとして参加し、鴨崎氏の話を広げながら対談形式で進められました。ピックアップしお届けいたします。
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インタビューは、SIBのお金の出し手についての質問から始まりました。

<SIBのお金の出し手>
Q:どういう事業に投資するかという目利きや、投資するプレイヤーついてもう少し
鴨崎氏:「貸し倒れが起こってしまってはだめなので、出資者は当然目利きをする。通常の投融資に耐えうるようなデューデリに耐えるような説明をしなければならない。一方で既存の事業だけで投融資をしていくにはマーケット的に限界があるのかと思っている感じがある」

Q:信金等の地域に根付いた金融プレイヤーとの親和性が高いのでは?
鴨崎氏:「地域金融の預貸率は、地域に出し先がなくどんどん下がっている。もともとは地域課題を金融の仕組みで解決するというのが地域の金融のミッション。ローカルビジネスに投資をすすめるSIBのようなものが機能していく余地はある

Q:投資側がリスクを担保するためのチェックポイントやリスクヘッジの方法について
鴨崎氏:「中間支援組織の役割が重要になってくる。案件を組成しNPO連れてくる、行政と折衝する等、SIBを成立させるための支援を行う。また、事業のモニタリングをしたり、パフォーマンスが悪いとCEOの首をすげ替える等の権限を持った存在として存在する」

SIBを成立させ、ステークホルダー同士のメリットを享受するためには、一般的な投資家のように事業が成功するサポートを行う存在、それが中間支援組織のようです。
鴨崎氏が言うとおり、SIBの発展には欠かせない重要な存在となりそうです。

「地域の課題解決ということで自分が出した10万円が、地域の事業を始める若者にいっている。FaceToFaceの関係で自分ごと化になりやすい。本来のお金の流れとして健全で新しい仕組みだと思った。」との江口氏の話から、話は東近江の事例へと移ってきます。

<東近江モデル-地域における共犯作り->
鴨崎氏:「投資等は事業への関与度継続性の観点より、強い関係を作りやすい。成果がでなければ戻ってこないという意味で、緊張感が投資家と事業者の間に築ける。更にローカルという文脈では物理的に距離感が近いので(その場に)行けちゃう。今までの『応援している』というものとは全く違う。こっちはお金を出しているんだ、という緊張感のある距離感が大事

これに対し江口氏はクラウドファンディングを例に取り、東近江モデルが市民が課題を自分ごと化するきっかけになるのでは、と期待を示しました。
クラウドファンディングは "映画をつくる" "コミュニティスペースを作る" など一緒に何かを作るためにお金を出すことで「共犯関係になる」。自分の知識やネットワーク等をそこにぶつけ、自分ゴト化・関心化することでだんだん入っていくことがシビックエコノミーを作る上で大事な事だと思う

まさに市民が自分たちに近いローカルな課題を「一緒に」解決していくための、仕組みづくり。
そのような地域における新しいお金と関係性の流れがこの東近江モデルには存在すると思われます。

最後にSIBに合うサービス・事業者について触れる機会がありました。

<SIBに超イノベーティブなものは合わない>
鴨崎氏:「超イノベーティブなものは合わない。実証事業を行政と一緒にやっていてエビデンスはあり、もう一步スケールしたいというベンチャー等は相性が良い。既に効果が証明されているメジャーなサービスは合わない。イノベーティブな取り組みでニッチな領域が良いと思う。
ただ、そういう事業者さんやベンチャーの情報が(鴨崎氏側で)あまり認識できていない。
ぜひ、そのような情報を持っている方やSIBに興味がある方は私のところまでご連絡ください!」
とし、セッションを結ばれました。

講演のつぶやきまとめはこちらから。臨場感あるので別の角度から講演を知ることができます。
togetter(インパクトを生みだすためのこれからの社会システム)


グラフィックレコーディング


こちらの講演のグラレコ(by はらだひろこさん、せきこさん、はしづめみわさん)です。
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講演動画


記事をよんで興味を持った方は、是非こちらの動画をご覧になり、生の声をお聞きください。





著者プロフィール:伴野智樹(@tomokibanno
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CivicWave運営メンバーの一人。
MashupAwards事務局/CIVICTECHFORUM事務局