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シビックテックと持続可能性

こんにちは、Code for Kanazawaの福島です。

今年度も全国で色々とシビックテックやオープンデータ、市民活動についてご講演させていただく機会が多くありました。お呼びいただいた皆さま、ありがとうございます。

色々なテーマで話すことが多いですが、最近、「持続性」、「継続性」というところを丁寧に掘り下げたいというお題をいただくことも増えてきました。
また、僕自身がこの数年とても興味のあるテーマでもあります。

そこで、このテーマについて、とりあえず第一稿としてまとめてみました。

シビックテックと持続可能性とは


この「シビックテックを持続させていく」ということはどういうことでしょう?
持続可能性とは、Wikipediaによれば一般的には、システムやプロセスが持続できることであり、組織原理としては持続可能な発展を意味しているそうです。いわゆる一過性のものではなく、活動や組織が継続的に何らかの成果をあげていくことだと考えられます。

日本全国で活動するシビックテックコミュニティはそのために何が必要なのでしょう?
お金?イベント?人?それともちゃんとした法人組織でしょうか?
Code for Kanazawa誕生から丸6年、他の地域の方々とも話をして、シビックテックの持続性のためにもっとも大事なのはやっぱり「人」だなぁと感じています。

人はどうして活動するのだろう


そもそも人はどうしてシビックテックの活動をするのでしょう?そこにはモチベーションが存在しています。
このモチベーションが何か?というところが最も大事なところで、ここをしっかり整理することが、誤解なくシビックテックの持続可能性の議論を進め、今後のシビックテックの可能性を広げていくことだと感じています。

いきなり結論からですが、これまでのディスカッションを通して、最終的に一つの軸に落ち着くのではないかと感じました(きっかけは「お金がないとできないよ!」という意見への疑問からでした)。
それは「金銭的報酬」という貨幣/非貨幣の軸です。

シビックテックの活動をする人の動機として「お金を得ること」が強い動機になるか、それとも「そうではない何かを得ること」(これが何かは後述します)が強い動機になるのかがモチベーションの大事な軸と考えています。
仮にここでは、前者をシビックテックビジネス、後者をシビックテックコミュニティと呼びます。

ちなみに、たとえお金を得ていても、そのお金では十分ではない場合(例えばちょっとした謝金など)、結局は他の何かがあるから活動しているということになるのでシビックテックコミュニティの範囲ととらえています。

営利組織と非営利組織


この記事を読まれる方の多くの方が既にご存知だと思いますが、非営利組織は利益を組織メンバーで分配しないで次の非営利事業に投資していくという考えがあるだけで、お金を得ることはまったく問題ありません。そのお金で人を雇用する非営利組織もあります。
そういう意味では、シビックテックビジネス=企業、シビックテックコミュニティ=非営利組織というわけではありません。企業がシビックテックコミュニティの領域をおこなってもいいし、非営利組織がシビックテックビジネスとしてお金を稼いでも構いません。つまり、どういう法人形態であるかは関係ありません(これは色々なシビックテックプレイヤーと話をしていて感じます)。

勘違いしていけないのは、この話は「人のモチベーション」に関わることだということです。組織の在り方は問題ではなく、”そこで働く人のモチベーションが何をエンジンにしてもらうか”という話になります。

貨幣は人間の発明の中でも最大の道具


お金は人がサービスや商品を交換する上で、とても便利な信用財です。数値で可視化でき、この中間物を介在することで様々なものと交換できるようになりました。値付けさえすれば、何でもお金で買えるし、売れる時代です。

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その便利な道具のおかげで、人は何でもお金を使うようになりました。お金で欲しいものを手に入れ、そのためにお金を稼ぐというやり方です。

でも、本当にそれは正しいのかという疑問がシビックテックコミュニティの活動をしていて感じます。

お金を持たないものはサービスを受けられない、またビジネスモデルというものが成り立たない場合はお金で値付けができないという問題があります。
また、交換相手となる現実世界のサービスや商品は有限であるにも関わらず、お金はお金を生み出すという性質があるため、(形を変えながらも)お金は今も増え続け、不均衡な社会を創り出しています。

自分たちで発明したお金によって、僕らは思考や活動を縛られているのではないでしょうか?

非貨幣のモチベーション


僕らがどうしてもやりたいこと、やらなくてはいけないこと、どうしてもして欲しいこと、そういったことはお金がなくてもやれるはずです。
例えば、家族の看病をするのに「お金がもらえないからやらない」という人はいないはずです(たぶん)。

もともと人間に備わっているその「非貨幣のモチベーション」をあらためて見つめ直す機会が今来ているのだと思います。

それは、タダ働きをしようという話ではありません(もうその発想が貨幣のモチベーションに囚われています)。
自分が受けるべきサービスをしっかりと望むように受け取るために、自分ができることをしてあげるという考え方です。最終的には、あなたもサービスを受け取れるのですから。

僕はペイフォワードという考え方が好きです。誰かからもらった親切を別の誰かに返してあげるという考えです。
親切をしてくれた人に御礼をするのはよくある話ですが、それでは二者間の話に留まります。でも、ペイフォワードでは、別の誰かにその御礼を返すことで、社会全体に親切心が広がっていきます。
それは、自分が受けているサービスの御礼を社会に返していくことのように思います。

シビックテックコミュニティはその非貨幣のモチベーションをエンジンにできる、とても素晴らしい活動形態だと感じています。

シビックテックコミュニティは非貨幣のモチベーションで回る


昨年、北陸では死者も出る大雪災害がありました。最近、大雪が降っていなかったこともあって、市民はあらためて雪の恐ろしさを知る一方、またいずれ来るであろう大雪に備えて何かできないかを考えていました。
そのため、昨年3月のインターナショナル・オープンデータ・デイでは大雪災害をテーマにアイデアソンを開催したところ、県外参加者も含めてたくさんの方が参加されました。
その参加する動機はまさに自分や家族、地域社会のためです。

Code for Kanazawaで幾つかのプロダクトを開発し運用して分かったのは、開発や運用に必要なのは必ずしもお金ではなく、非貨幣のモチベーションでも可能なことが分かりました。
それは以下のようなものです。
「自らが解決したいと思える課題への情熱」
「喜んでもらえるという充足感」
「社会貢献への満足感」
自分が必要とするものなら、お金がもらえなくたって、それが欲しいのでみんなで創ろうという話ですね。

そして、シビックテックはこうした活動のためにテクノロジーを活用しています。
非貨幣のモチベーションに興味が集まるようになってきているのは、こうしたテクノロジーの進化によるものが大きいと思います。
つまり、非貨幣のモチベーションが成立するぐらいに、自分が提供する時間や能力のコスト負担が下がってきているんです。

例えば、会議のために毎週一回集まらなければならないとしたら、やりたくてもできない人は多いと思います。しかし、それがテレビ会議ですむとしたら、参加できる人も増えるでしょう。さらには、SNSのメッセンジャーで議論を進めるだけでもできるとすれば、もっと参加障壁は下がるはずです。

つまり、テクノロジーの進化は市民の力を少しずつ集め、成果を成し遂げられる基盤を創り出しています。
それがこの時代にシビックテックが生まれた理由と言えるかもしれません。

最後に

今でも田舎の方では助け合いという言葉で、野菜をもらったり、住居をお世話してもらったり、買い物に送ってあげたりしています。そこにはお金のやり取りはありません。

僕らは何のために働くのか?
そういうことを考え出している人も増えてきているなか、人が行動を起こすモチベーションに色々と変化が起きてきている時代なのかもしれません。
今後、様々な視点(情報科学だけでなく、経済学、社会学などなど)で、このことについて深めていきたいと思います。
課題についても見えてきていますし…。

ご興味ある方、ぜひディスカッションしましょう。

P.S.
もう一つの軸であるシビックテックビジネスについては触れませんでしたが、この部分についても僕はとても大事だと思っています。会社経営者でもありますから、むしろ本業の部分です。
時間があればこの部分についても考察を深めたいと思います。



著者プロフィール:福島健一郎(@kenchif
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CivicWave運営メンバーの一人。
一般社団法人コード・フォー・カナザワ(Code for Kanazawa) 代表理事、アイパブリッシング株式会社 代表取締役
Code for Kanazawaが開発した5374(ゴミナシ).jpは100都市以上に展開。一般社団法人シビックテックジャパンを全国の仲間とともに設立準備中。