
エンジニアはヒーローだ!そしてエンジニアではないあなたもヒーローになれる!
シビックテックにおいて、コード(プログラム)を書いたり、サーバ環境を構築して運用するエンジニアはまさに現代の魔法使いです。彼らエンジニアはシビックテックにおいて、ヒーローであることは間違いありません。
でも、エンジニアではない人たちも彼らと同じくらい、とても大事な存在です。そこに誤解があって参加率が低かったり、彼らの能力がしっかりと発揮されないのはもったいないです。
ここでは、エンジニアではない彼らがどのようにシビックテックコミュニティで必要とされ、活躍できるのかを明らかにしていきましょう。
なお、この記事は、Code for Kanazawaが毎月第2木曜日に開催しているシビックハックナイトの初心者テーブルにて、いつも質問されるもの(つまりFAQ)の一つを取り上げてみたものです。
▶1. そもそも社会は多様です
"私たちが創りたいと思う社会を(私たちの手で)創りたい"、この「私たち」は誰かと考えてみると、様々な人たちで構成されていることを改めて再認識するはずです。人間はついつい自分の周りの人たちだけで他者を構成しがちですが、社会はもっと多様です。
社会が多様ならシビックテックコミュニティも多様でないと「私たちが創りたい社会」を自らの手で実現できません。
エンジニアでない人たちは確かにテクノロジーを使ってモノやサービスを直接創りあげることはできないかもしれませんが、どういったモノやサービスが社会に必要なのかを考える上で、とても大事な一人です。
参加することそのものが、シビックテックなんです。
▶2. 課題やビジョンを提示する
シビックテックはただ創りたいものを漫然と創れば良いというものではありません。
「私たちが創りたい社会」を楽しく夢想して「こういうものが必要だ」、「この課題を解決したい」という結果として何かモノやサービスが創られます。
この時に課題やビジョンを練り込んでいく役割の人は、とても大切です。もちろん、それはエンジニアでもできるかもしれませんが、必ずしもエンジニアである必要もありません。
その話題に精通している人が議論やビジョン創りを引っ張っていって欲しいと思います。
▶3. プロジェクトをまとめる
何かを実行するときに、Code for Kanazawaでは(緩いもの、しっかりとしたものいろいろありますが)プロジェクトチームが創られます。その方が自律的に動きやすいからです。
このとき、チームをまとめる人はとても大切です。シビックテックコミュニティのような組織では、特に大事かもしれません。
リーダーと呼ぶかどうかは別として、様々な困難のなか、チームの頼れる存在、精神的支柱として活躍する人はシビックテックを何年も継続していくためには貴重な存在です。
そこに技術的素養は必要としません。エンジニアではないと思っているあなたこそ、それに適しているかもしれません。
▶4. (例えば)データ入力をする
シビックテックの成果の一つであるアプリやネットのサービス、何かの機器だったりするため、エンジニアではない人は作り始めたら何も手伝うことはないと思っているかもしれませんが、そんなことはありません。
例えば、5374(ゴミナシ).jpを創ろうと思ったら、ごみの収集カレンダーやごみ分別データなどを用意し、所定のフォーマットにデジタル化する必要があります(すでにオープンデータで揃っていたとしても、エクセルなどを使って所定のフォーマットに合わせるという作業が必要になるかもしれません)。
意外にそのデータ量は多いため、こういったデータ入力を非エンジニアの方々が手伝うというのは、とても有益です。
しかも、一緒に創るという行為はどんなに簡単でもとても楽しくて、「創る」ことそのものに喜びを感じるかもしれません。自分が創ったデータは最終的にアプリに組み込まれ、実際にみんなに使ってもらえるのでその喜びも一入です。
▶5. 関係団体や自治体、各種機関等と交渉する
シビックテックの活動をしていると様々な関係者の方々(行政など公的機関、NPO団体、大学、地域の方々など)と話をすることが増えます。社会に関わるアプリやサービスを創ろうとしているから当然のことなのですが、交渉して話をまとめるには時間のかかることも多いです。そして、交渉してもまとまらないものもあるかもしれませんから、仕事と同じでそれなりに大変なことです。
エンジニアではないあなたこそ、そういう役割を担うのにピッタリかもしれません。
Code for Kanazawaの「5374」も「のとノットアローン」もその他多くのアプリやサービスは外部との交渉の結果、実現しています。
▶6. 活動のPRをする
Code for Kanazawaは複数のプロジェクトチーム、複数のイベントが毎年行われていますが、その全てをメンバーですら把握していません。
情報発信は簡単なようで、とても難しく、内部や外部へどう情報を共有したり、発信していくかはいつも大きな課題となっています。
そこに手助けをしてくれる人は喉から手が出るほど欲しいですし、Code for Kanazawaに限って言えば、情報共有や発信の広報戦略まで考えてくれる人は常に求めています。
全国のシビックテックコミュニティをまわっても「情報発信をどうするか?」はいつも議題にあがることですから、この部分であなたの力はとても必要とされています。
▶7. とにかくあなたを必要とする仕事はいっぱいある
上記であげたのは、ほんの一例です。とにかくあなたを必要とする仕事はいっぱいあります。
シビックテックとは言っても、プログラムだけで社会を良くすることはできません。
まずはシビックテックコミュニティに参加して、興味のある取り組みをしているチームに顔を出してみましょう。何かをしなくても、集まりに参加して話を一緒にするというだけでも全然良いと思います。というか、一緒に考えてくれる仲間が増えることは、シビックテックの活動を続けていく上で最も大事なことですから、まずはそこからでいいんです。
状況が分かってくれば、「これを手伝ったほうが良さそう」となるでしょうし、場合によっては「これを手伝ってもらえないか」と逆に相談されるかもしれません。
「テクノロジーで私たちの望む社会を実現したい」というビジョンを共有しながら一緒に行動できる仲間はいつも必要とされています。エンジニア、非エンジニア問わず、ぜひこのオープンで刺激的な活動に参加してみませんか?
この記事はシビックテックをテーマにした「Civic Tech Advent Calendar 2017」企画の25日目(最終日)の原稿です。他の記事はhttps://qiita.com/advent-calendar/2017/civictechの一覧から見れるようになっており、日ごとに記事が増えています。ぜひ、ご覧ください。
▶おまけ 2017/12/26:でも、「実際のところ」どんな人がどんな風に参加してるの?
Code for Kobeの西谷さんから上記の点が気になるということで内容へのアドバイスをいただきました。ありがとうございます。
というわけで最後におまけです!
Code for Kanazawaを例にとっていうと、非エンジニアで参加している人たちで多い層は、まず主婦です。他の地域のシビックテックコミュニティにも多くいらっしゃるのではないかと思います。
また、男性では、これまで他のボランティア活動を行ってきた方が多く、地域での福祉関係のお手伝いをしている方やまちづくりや町内会に携わっている方、さらには公文書のオープン化に個人的に取り組んでいるという方もいらっしゃいます。
さらに、Code for Kanazawaで活躍する非エンジニアの方は特別というわけではなく、数という面でもみても多数派であるため、普通に議論に参加しています。また、非エンジニアであってもICTなどの技術は少し分かるという方も多いので、そんなに的外れな議論にはならないです。
のとノットアローンは40名近くがチームに名を連ねますがその大部分は主婦層ですし、最近、立ち上がりつつある様々なチームは非エンジニアが中心となっています。
エンジニア、非エンジニア問わず、リーダーシップを発揮してくれる人は助かりますし、様々な事務作業をこなしてくれる人もとても感謝されます。ムードメーカーも。
正直、世話役みたいなことをコミュニティやプロジェクト内で立ち回ってくれる人たちには頭が下がります。エンジニアは創ることが主になるので、そういう裏方部分をテキパキとこなしてくれる人は大変ありがたいんです。
ニワトリが先か卵が先かの話ではないですが、非エンジニアの方々に違和感なく参加してもらうためにも非エンジニアが多いということも大事なのかもしれませんね(だから最初にどうやって増やすの!(笑)みたいな話もあるかもしれませんが、そこは地道に増やすしかないかも。でも、理解者はいます)。
著者プロフィール:福島健一郎(@kenchif)

CivicWave運営メンバーの一人。
一般社団法人コード・フォー・カナザワ(Code for Kanazawa) 代表理事、アイパブリッシング株式会社 代表取締役
Code for Kanazawaが開発した5374(ゴミナシ).jpは100都市以上に展開。