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今回のオンライン井戸端会議は特別編!本当のオープンデータの話をしよう!(続編)

ブログやFacebookページなどで発信しているだけだと顔が見えません。
日本全国のみなさまと「顔を合わせたお付き合いをしたい!」ということで、CivicWaveでは、オンライン井戸端会議はじめました。
第12回目となった今回はいつもと違った特別編!
銀座にあるメディアテクノロジーラボ様の場所をお借りして、3月のCIVICTECHFORUM 2017でも好評だった「本当のオープンデータの話をしよう」の続編を行いました。そして、その模様をオンラインで中継させて頂くという形です。

CIVICTECHFORUM 2017の「本当のオープンデータの話をしよう」については、こちらに記事になっていますので、合わせてご覧ください。
○本当のオープンデータの話をしよう「CIVIC TECH FORUM 2017」【福島健一郎】

本イベントの背景

「本当のオープンデータの話をしよう 」というCIVICTECHFORUM 2017のセッションは、筆者である私(福島)がモデレータを務め、東京大学の瀬戸氏とトークセッションをさせていただくというものでした。
瀬戸寿一氏(東京大学空間情報科学研究センター(CSIS)・特任講師)
モデレータ:福島健一郎(一般社団法人コード・フォー・カナザワ 代表理事)

オープンデータは、シビックテックの活動をしていく上で大事な資源の一つです。オープンデータがないとシビックテック活動ができないわけではないですが、自分たちの地域の活動をしていく上で、その地域の自治体のデータがオープンデータとして公開されていることは、市民自身が自分たちに必要なサービスを作っていくためにもとても大事です。
そういったこともあって、一般的に自治体のオープンデータ=オープンデータと呼ぶようになってきました。しかし、本来のオープンデータは自治体のデータだけに留まらない概念です。
前回のイベントでは、オープンデータの概念をあらためて考え、政府や自治体のデータに留まらないデータについてディスカッションをし、そこから今後のオープンデータについても考えるというものでした。
ただ、終わってみたところ、まだまだ話したり内容もあるし、(とても有り難いことに)もっと聞きたい人たちもいるということで、今回は私たち二人が特に注目しているGLAM(Gallery, Library, Archive, Museum)と言われる文化施設のオープンデータ化について焦点をあてることにして、続編とさせて頂いたしだいです。

今回、続編を開催するにあたり、スペシャルゲストもお呼びしました。

・奥田倫子氏(国立国会図書館

奥田さんは2008年から同館の電子図書館業務に関わっておられて、ライデン大学大学院人文学科にて書物・デジタルメディア学も専攻されています。
現場で活躍されながら、実際にデジタルアーカイブにも造詣が深い、奥田さんと一緒にこれからのGLAMのオープンデータ化について考えてみました。

図書館がシビックテックコミュニティの活動できる場所になりえる

まず、前回のCIVICTECHFORUM 2017の振り返りから始めました。
特に、オープンデータは自治体のデータを公開するというトップダウン的手法だけでなく、市民自身が、例えばセンサーデバイスを使って自然や環境測定を行ったデータを公開するというボトムアップ的な手法、さらに行政と市民が共同で、例えば街の不具合に関するデータを収集し、課題解決につなげるようなミドルアップ&ダウンという手法もあるんだという話がありました。そしてこれらをつなぐキーワードとして、多くの人々が、自らデータを使いたい・作りたいと思える「参加型データ社会」の構築が大事ではないかという話が振り返りとして提供されました。

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また、振り返りの後に今回のトピックにつながる話題提供もありました。

皆さんは図書館は全国に幾つあるかご存知ですか?

…答えは3,280館です(日本図書館協会2016年)。

ただ、残念ながら全ての自治体に必ず図書館があるわけではありません。瀬戸さんの調べた資料によれば、全国813の市のうち、9の市は市立図書館を持っていませんでした。また、町村にいたっては、全国928のうち、409の町村が町村立の図書館を持っていませんでした。
そう考えると、図書館も大都市部に集中しているのだなぁと感じます。

しかし、それでも図書館は全国に最も多く存在する公的な文化施設であることに変わりはありません。
こうした資料が提示される中で、瀬戸さんから「各地のCode for コミュニティは全国に40〜60程度あると言われているが、図書館を活動の場として使っていったらどうか」と提案も出ました。
図書館は地域の文化資源の集積拠点です。地域のために活動するCode for コミュニティと協働できるのではないでしょうか。

デジタルアーカイブは収集・保存から利活用へ

次いで今回のスペシャルゲストである奥田さんにご登壇頂きました。タイトルは、「デジタルアーカイブ@CivicWave」として、デジタルアーカイブの歴史から海外事例、そしてオープンデータ化の可能性についてまでお話をしてもらいました。
なお、あくまでもこの日のお話は個人的な立場としてのお話になります。

まず、奥田さんはデジタルアーカイブを大きく三期に分けて捉えているそうです。

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90年代から2007年までの第1期は、デジタル情報資源の収集と長期保存に重点がありました。インターネットが普及し、様々なデジタルメディアが登場してきた中で、簡単に削除されたり変更されたりしてしまうデジタルデータをどのように長期的にアクセス可能としていくかが、新しい課題として研究者コミュニティや図書館・情報学関係者に認識されるようになったそうです。
2002年には、OAIS参照モデルというものが電子情報の長期保存のための抽象的なモデルとして、国際規格になりました。

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例えば、今から25年前に僕がデジタルデータを保存していたのはフロッピーディスクでした。
しかし、今、そのデータを読み込みたくてもフロッピーディスクを読み込める機械が手元にはありません。不可能ではないにしろ、フロッピーディスクのデータを完全に読み込むのは、なかなか大変なことでしょう。デジタル技術の進歩は早いため、あちこちでそういった現象が見られています。

OAIS参照モデルは、データのコンテンツそのものだけでなく、そのデータの意味を示す情報やコンテンツの変更の履歴、データ改変がないかを証明する情報などがパッケージ化されています。さらに特徴的なのは、保存に関する計画も考えられていることです。
こうして「データの意味を理解する手段の消失を防ぎ、100年後であってもデジタルデータの再生性を担保するための仕組み」をモデルとして提案したのです。

一方、2004年末にはGoogleがアメリカ、イギリスの大学図書館等が所蔵する1500万冊をデジタル化し、本文検索をできるようにする計画を発表しました。

これに対抗し、公的機関でも大規模なデジタル化が進んだのが第2期です。
日本では、国立国会図書館の大規模資料デジタル化や地域でのデジタルアーカイブ事業が進み始めます。また、後述する欧州のEuropeanaが公開されたのもこの時期です。

そして、第3期に入り、収集・保存したデータを使ってもらうことに重点がシフトしてきています。そのためにメタデータを充実させたり、二次的な情報の充実も目指されるようになっています。もちろん、オープンデータとして公開していくという選択肢もその中には含まれています。

データの収集・保存から利活用という流れは、まさに自治体データのオープンデータ化と重なるところがありますね。

Europeanaに学ぶデジタルアーカイブ構築

もう一つの興味深い話として出てきたのが海外事例としてのEuropeanaです。

Europeanaはデジタルアーカイブに興味がある人なら今では多くの人が知っている、欧州の絵画、書籍、映画、写真、地図、文献などのデジタル化された文化遺産を統合的に検索することができる電子図書館ポータルサイトです。オープンデータで公開されているものも数多くあります。

奥田さんは、このEuropeanaは、データを持っていて公開するデータパートナーと公開されたデータを加工して何かを創り出す二次利用者、そしてデータそのものや二次利用されたものを利用するエンドユーザの三者のギブ&テイクの関係で成り立つネットワークであると語りました。
データを公開し、それを利用者はただ利用するという一方通行ではなく、利用者自身もデータの作成や提供に協力をします。

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例えば、第一次大戦期の英字・独字新聞のテキスト化を行う翻刻ソンというイベントをベルリンで開催したり、“Europeana 1914-1918”という第一次世界大戦に関する資料を公開するプロジェクトでは、欧州20カ国から一般の人たちが資料となるものを提供していたりしています。

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オープンな公開と参加の時代で果たすべき所蔵機関の役割とは

奥田さんから最後にオープンデータ化について語られました。

2017年4月に発表された"デジタルアーカイブの構築・共有・活用ガイドライン"では「活用が最大限に行われるよう、可能な限りオープン化し、共有する各種データが自由に二次利用できることが望まれる」とあります。ライセンスについても具体的で「PDM、CC0、CC BYを表示することを推奨する」とあるんです。

こうした背景の中で、奥田さんからは様々な機関も一般の利用者も一つのネットワークの中に入って、どうしていくかを考えて、公開や利活用を進めていくべきだと語られました。

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こうした「参加」の時代になっていくことで、所蔵機関が果たすべき役割はますます大事なものになっていきます。利用や参加をする人たちのために資料を見つけやすくする配慮はもちろんですし、長期保存と永続的なアクセスも保証しなければなりません。そうした信頼性をしっかり担保していかなければならないわけです。

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利活用の鍵はコミュニティ連携

今回の奥田さんの講演終了後にも、あらためて石川県能美市の事例を僕から紹介させて頂きました

能美市立九谷焼資料館が公開する九谷焼のデータの二次利用はとても幅広く、携帯のスマホケースから始まって紙皿やプロジェクションマッピング、さらには新築の戸建てにまで利用され始めました。

これらの活動の原動力は市民のコミュニティです。そういった利用者は勝手に生まれるものでもありません。
その地域を愛している人たち、九谷焼を愛している人たちによって、一歩ずつ実現されているものです。
僕はこれぞシビックテックだと思うんです。

願わくば、奥田さんの発表された内容の通り、データ公開者もそれを利用する市民もそこに関係する様々な方々も一緒に、データの公開と利活用について未来を楽しく語れるような場があったらいいなぁと思います。

立場が違えば考え方も違うし、「なんでこれが分からないんだろう?」って思うことも多いです。
でも、そういうことを乗り越えていくことこそが、まさにシビックテックのやってきていることだから、きっと僕らの力がGLAMの世界にも役立てるんじゃないかと感じています。

これからがとても楽しみです!

つぶやきまとめはこちらから。
togetter(CivicWave:オンライン井戸端会議6月号|本当のオープンデータの話をしよう!(続編))




著者プロフィール:福島健一郎(@kenchif
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CivicWave運営メンバーの一人。
一般社団法人コード・フォー・カナザワ(Code for Kanazawa) 代表理事、アイパブリッシング株式会社 代表取締役
Code for Kanazawaが開発した5374(ゴミナシ).jpは100都市以上に展開。