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シビックテックはどうなっていくべきか?

CIVICTECHFORUM@東海」最後の記事は、以下2つのお話と、登壇者へのQ&Aです。
 ーシビックテック概要について
 ー日本で一番歴史のあるCodefor団体である「Code for Kanazawa」について

今回のイベントでは、参加者から登壇者への質問(Q&A)がとても盛り上がり、司会者の独断と偏見で、急遽プログラムを変更したという事案が発生しました。(このゆるさもシビックテックらしいですねw)
そして、それらの話題は、その後の井戸端会議で、継続してディスカッションされました。

様々なプレイヤー(市民団体、学校の先生、行政職員、学生、いろんな地域の実践者)が集合したからこそ、実現したディスカッションだったように思います。

最初は「登壇者への質問」という形でしたが、井戸端会議の場では参加者も登壇者もなく、みんなシビックテック活動をしている実践者同士として垣根なくディスカッションでき、この人との会話の近さが地域開催らしさな気もしました。


シビックテック概論 by柴田重臣(CIVICTECHFORUM2016運営委員長)

国内外のシビックテック事情について、CIVICTECHFORUM2016運営委員長でもある柴田さんに、
 ーシビックテックの本質
 ーシビックテックの歴史
 ー日米のシビックテックの違い
などを簡単にレクチャーいただきました。
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シビックテックの考え方は「build with, not for!」。
特定の誰かのために作るわけではなく、一緒に作るという考え方です。

そもそもシビックテックの起こりは米国。Amazonなどのサービスに比べて使いにくい行政のWebサービスに対する課題感から生まれたものであり、Goverment 2.0というキーワードから派生していったものでした。

Code for Americaの「口を動かすのではなく手を動かせ!」という言葉に感銘をうけ、日本でもCode for Japan(以下:CfJ)という団体や、そのブランド名を利用した団体が地域に多く作られました。
CfJは各地域で活動している団体をまとめている中間組織とよく誤解されていますが、CfJと各地域で活動している団体は全く別団体です。

前述の通り、アメリカのシビックテックは「政府の改善」をめざしたものでしたが、日本のシビックテックは少し違います。Code for Kanazawaが生み出した「5374.jp」や、Code for Sapporoが生み出した「さっぽろ保育園マップ」が全国各地で開発されていることが象徴しているように、シビックハックナイト、井戸端会議など地域での草の根活動が中心です。

そして、シビックテック先進国のアメリカは今、大きな局面を迎えています。
それを先日NYで行われたパーソナルデモクラシーフォーラム(以下:PDF)という世界最大のシビックテックの祭典に参加し、確認にいってきました。その際に聞いた、PDFファウンダーのアンドリューさんのこの言葉はまさに!っと思ったとのことで、共有していただきました。
考える市民が生まれたことこそ、シビックテックの本質
テクノロジーさえあれば、全てを解決できるとおもっていたらそれは違う

柴田さんが当日発表された資料は公開されているので、詳しくはこちらをご覧ください。


当日のグラフィックレーティングになります。
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グラレコ by 森本涼子さん



シビックテックの実践事例 〜「Code for Kanazawa」と「ちばレポ」〜

シビックテックの概要のあとには、実際に活動されている実践者の方にお話を伺いました。
市民団体事例として、日本のCodefor団体として一番の歴史をもつ「Code for Kanazawa」の代表理事である福島さんに、行政事例としては千葉市の松島さんに「ちばレポ」についての具体的なお話をいただきました。

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Code for Kanazawaは、日本で初めてのCodeforを名乗った団体で、Codeforとしては一番歴史が古い団体です。様々な試行錯誤の中で得た活動方針などについてお話いただきました。
活動内容やポリシーなどについては、CivicWaveの記事で詳しくかかれておりますので、こちらを参照ください。
 →CodeforKanazawaのはじまり
 →ポリシーについて
 →プロジェクト制について
 →シビックテックコミュニティのエコシステムについて

今回は、これらの記事では書かれていない部分について紹介したいと思います。
 ・課題解決を思考するシビックテックは、イベント時だけ盛り上がるだけでは足りないため、連続して開催されるアイデアソン・ハッカソンを実施
 ・IODD(インターナショナルオープンデータデイ)の際には、目的がオープンデータの普及だったので、報告書を県内自治体に勝手に送付
 ・毎月、定期的に開催しているシビックハックナイトでは、「入門者向けテーブル」を用意し、初めての人でも参加しやすい工夫をしている
 ・自らが解決したいと思える課題への情熱が大切であり、本当に必要としているからこそ、お金が第一の判断基準ではない
 ・目指していることは、Code for Kanazawaはシビックテックビジネスが生まれる地域の土壌になること

オープンデータイベントの報告書を県内自治体に勝手に送付した事例に関しては、すぐに真似できるアクションなため、他の実践者たちも、「自分たちもやってみよう!」と刺激を受けていました。

当日の資料は公開されているので、詳しくはこちらをご覧ください。


当日のグラフィックレコーディングになります。
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グラレコ by 舘村花菜さん

千葉市のお話に関しては、先に記事にしておりますので、そちらを参照ください。
 →ちばレポは、リリース後も進化を続ける永遠のβ版「CTF@東海」


参加者から登壇者へのQ&A

3名の講演が終わった後は、会場から3名への質問タイムです。
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Q:ちばレポ参加者は物好きなのか?インセンティブはあるのか?
松島さん:物好きな方がいらっしゃるのは事実。次はいつなのかと電話がかかってくる高齢者も居る。ちばレポグランプリ(賞金はないけど、ページで告知)などでの動機付けもしています。

Q:市民参加の仕組は?どうやって広めているの?
松島さん:各地区でのボランティセンターを活用。ネットの世界でつぶやくとエンジニアに届く。
福島さん:シビックハックナイトが入口。そして様々なところでの活動紹介をすること。
柴田さん:人の繋がりが大切。いわゆるナンパをする。無理やりは引き込まない。

Q:市民活動をするときのマネタイズの方法は?また、一般社団法人にしている理由はなんですか?
福島さん:一般社団法人にしている理由は、5374.jpを継続的にやるため。任意団体だと責任が持てないと考えました。社団法人にしていますが、売上は年間100万いくかいかないか(金沢市で開催しているアプリ開発塾運営費など)。必要な経費分のマネタイズはしたいと考えていますし、シビックテックビジネスが生まれる地域の土壌になりたいですが、お金が第一の判断基準ではありません。

Q:行政の方とうまく付き合っていくにはどうするのが良いか
松島さん:行政のキーマンをうまく見つけていくのが大切
福島さん:キーマンが大切。最近は報告書を送りつけるなどもw。
柴田さん:行政側のペースに合わせるのが大切

Q:シビックテックはどうなっていくべきか?中央集権か地方分権か?
柴田さん:他を知る必要がある、情報共有と発信するのが良い。決定は各地域が決定すれば良い。
福島さん:大きくするより、小さいほうが課題がわかりやすい。自分の手が届く範囲がよいのでは?
松島さん:「地縁」から「知縁」に変わっていき、シビックテックと呼ばれない普遍的なものになっていくのでは?

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グラレコ by 藤田真実保さん

そして、これらの話題は、その後の井戸端会議で、継続してディスカッションされました。

CIVICTECHFORUM@東海のレポートは以上です。
第1弾、第2弾のレポートも是非ご覧ください。
 ・第1弾:東海のシビックテック実践者が大集合した「CTF@東海」
 ・第2弾:ちばレポは、リリース後も進化を続ける永遠のβ版「CTF@東海」





━━蛇足(めんどくさいこというよ)━━━━━━
個人的には、柴田さんのプレゼン資料の中の、こちらの言葉がとても印象的でした。
ソーシャルムーブメントというものはすぐには起こせないもの。
もしも人々が見限ったとしたら、それはすぐに成果を求めてしまったから。
少ししか舵を切れなかったとしても、10年後から15年後には私たちはまるで別の地点にいる。

そして、福島さんの資料の最後にもこんな言葉がありました。
大きな施策による解決だけではなく、コミュニティ自身のよる小さな課題解決の積み重ねを大事にしていきたい

大きな変化をすぐに求めるのではなく、小さな変化をコツコツとして行く活動が、「日本の」シビックテックらしい気が、個人的にはしています。




著者プロフィール:鈴木まなみ(@rin2tree
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CivicWave運営メンバーの一人。
2歩先の未来をよむブログメディア「TheWave」の湯川塾の事務局を務め、テクノロジーの最新動向をウォッチしながら、コミュニティ運営や執筆活動中。
また、MashupAwards8〜11の事務局を務め、内外のコミュニケーション全般を担当。