
先日書いた「知らない人にシビックテックをどう説明する?」という記事の中で、コードを書くことが必要になる事例ばかりをあげてしまいました。しかし、それだけがシビックテックではありません。
今回紹介する「ウィキペディアタウン」などのように、ツールやサービスを活用することも一つのシビックテック活動だと思うため、東さんの記事を拝見し、寄稿していただきました。(鈴木まなみ)
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シビックテックの活動はソフトウェア(コード)を書くことだけではありません。ワード、エクセル、ブログ、といったツールやサービスを活用することも立派な活動です。
今回は、街歩きしながら、詳しい人に街の話を聞いたり、図書館に行って調べたりして、最終的にウィキペディア上に記事として投稿する、といった一連の活動を1日がかりのイベントとして開催するウィキペディアタウンについてご紹介したいと思います。
ウィキペディアタウンなどのイベントで、自分の町を歩いたり調べたりすることは、自分の町を知るきっかけとなります。良いところばかりではなく課題に気づくこともあるでしょう。
そうしたものに自らが気づき、町に興味を持ったり、課題をどうしたら良いか自分ごととしてとらえ、関係者と対話しながら一緒になって現実的な解決策を考える。
そういったことがシビックテックの活動の原点だと思います。
▶ウィキペディアタウンとは?
地域には外部に知られていない情報がたくさん眠っています。
例えば地域観光を課題として取り上げる場合、その魅力について情報発信することが解決策のひとつにつながるケースは多いでしょう。
そういったものを街歩きしたり、詳しい人に聞いたり、図書館に行って調べたりして、最終的にウィキペディア上に記事として投稿する、といった一連の活動を1日がかりのイベントとして開催するのがウィキペディアタウンです。
元々はウィキペディア上に記事が充実していて、その記事へのアクセスも容易な町のことを指す言葉ですが、地元の記事を書くイベントそのものを指すようになりました。
▶ウィキペディアの長所
情報発信の場はウィキペディアに限らずブログでも、独自のウェブサイトでも良いのですが、ウィキペディアの長所のひとつはインターネット検索でたいてい上位に出てくるところです。
下記は私が書いた地元の名勝についての小記事ですが、「子和清水」でインターネット検索すると検索結果の先頭に出てくるはずです。
→子和清水 (松戸市)
「ウィキペディアの記事は鵜呑みにするな」とはよく言われますが、ウィキペディアには編集方針があり、客観的でない意見などを書くのは禁じられています。あくまで書籍などで論じられた内容を、できるだけ複数引用しながら両論併記で記述します。
もちろん、中には誤った記述もあるかもしれませんが、多数の人が見ているので修正も自律的に行われます。結果として検索結果で比較的上位に出てくるのは相対的に信頼性が高いことの現れでもあります。
また、「ウィキペディアの記事をコピペするな」ということもよく言われますが、それは「学校の宿題などで自力で調べることをせずに他人の記事をコピペしたりするな」と同様の意味です。
法的にはウィキペディアにある文章はその利用ライセンス(ごく簡単にいえばクレジット表記をすることと、二次著作物にも同じライセンスを適用することの2点)に従う限り、まるごとコピペしても全く問題のないオープンデータです。
目的を問わず再利用できますので、ウィキペディアに書いた記事は例えば紙に印刷して案内板に貼ったり、文字テキストをコピーして音声読み上げアプリで再利用したりすることができます。
さらに、個人ブログなどと違い、理由がない限り記事が無くなるということもほぼありませんので、(保証されたものではありませんが)アーカイブとしての意味合いもあります。
▶シビックテックとしてのウィキペディアタウン
冒頭でも書きましたが、ウィキペディアタウンなどのイベントで自分の町を歩いたり、調べたりすることは自分の町を知るきっかけとなります。良いところばかりではなく課題に気づくこともあるでしょう。
そうしたものに自らが気づき、町に興味を持ったり、課題をどうしたら良いか自分ごととしてとらえ、関係者と対話しながら一緒になって現実的な解決策を考える。
そういったことがシビックテックの活動の原点だと思います。
もちろん、ITを使わない解決策も多いと思いますが、そういったものを全てシビックテックの活動としてやってしまうと活動範囲がぼやけてしまうので、どこかで線引も必要だと思います。
街歩きを伴うイベントは、ウィキペディアタウン以外にも様々なものがあります。
●マッピングパーティ
ウィキペディアの地図版であるオープンストリートマップ(OSM)に情報を記録していくイベント。紙地図とペンをもって街歩きをした後、みんなでOSMに入力していきます。
●ホイールマッピングパーティ
バリアフリーマップの「ホイールマップ」に情報を記録していくイベント。車いすの方と一緒に街を歩き、写真などもとりながら、バリアフリーマップを作成していきます。
●今昔写真イベント
今と昔の写真を比べるアプリ「今昔写真」を使うイベント。昔の写真をもてきてもらい、その写真の「今」を撮りに街にでかけます。
●マチマチあるき
ご近所SNS「マチマチ」を使うイベント。「子育て&学び」「大人の学び」「交流拠点」「グルメ」「オンリーワンのおもしろポイント」などのテーマでまちの魅力を探り、情報共有します。
サービスを活用するというシビックテックなら、参加のハードルは比較的低いのではないでしょうか?
※この記事は著者が「Code for Matsudoをはじめよう」のイベントページで投稿している内容をCivicWaveで編集して掲載しています。
著者:東修作(@higa4)

オープン・ナレッジ・ファウンデーション・ジャパン事務局長/オープンストリートマップ・ファウンデーション・ジャパン事務局長/Code for Matsudo/Georepublic Japan所属