onedoc

日本最大級の開発コンテストであるヒーローズ・リーグCIVICTECH賞の決勝レポートになります。
ヒーローズ・リーグは、「つくる」を通じて、誰もがヒーローになれる開発コンテスト で、多種多様な作品があつまることでも有名です。
そのため、他の「シビックテック」のコンテストでは見られないような作品も多くあり、シビックテックという枠の中でも多様な視点を持ち合わせています。

今年決勝に選出された作品はこちらの10作品になります。


その中で今年のCIVICTECH賞として選ばれた作品はこちらです。


CIVICTECH賞


OneDoc

難病患者や介助者は、入院書類や行政サービスを受けるのにたくさんの書類を書く必要があります。そうした書類の記述の一部を助けるためのLINE BOT
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課題解決のアプローチが、正論ではなく、現実性をみているところが素晴らしいと評価された作品です。

課題解決は、よくある「入力のめんどくさい部分を自動化」をLINE BOTでするだけではなく、依頼者と委任者が入力データを「共有できる」という委任の際の課題解決も視野にいれている点、そして、行政に働きかけて必要な機能を洗い出しているというアクションも評価ポイントとなりました。(実装はまだとのことでしたが)

個人的には、入力のめんどくささ、必要書類の一式出力といった、万人が抱えている課題解決部分よりも、「委任」という、自らが直面した課題を自らで解決しようとしている「自分ごと」な課題解決なところにシビックテックを感じた作品でした。
またユースケースを絞ってプロトタイプをつくっていくやり方も素晴らしいなと思ったところです。



決勝進出作品


審査員のみなさまには、ベスト3作品まで選んでいただきましたが、最後は一番シビックテックらしいもの。という視点で、「OneDoc」が選ばれました。
最後まで迷われたのは以下の2作品です。

AnyMo(エニモ)
どんなものもモビリティにする走行ユニット。
「これが自動で動いたら嬉しいな」という想いを誰でも簡単に叶えることができる夢ある作品。
実際に使うにはまだハードルが高いものの、ビジョンと完成度はとても評価されていました。
anymo




Star ☆ Jam Street 〜清掃楽器音楽夢想〜
音と光を演奏できるほうきギターなど清掃楽器による、鑑賞者飛び入り参加型のインタラクティブパフォーマンスアート作品。
一見シビックテックなのか?と思わせるこの作品。完成度の高い清掃楽器は人と人とが関わるトリガーでしかなく、この作品の一番重要なところは「人と人との心の動き」であり、人が関わることで発展していく作品だからこそ、シビックテック賞に応募したとのこと。
ほうき




それでは、今回決勝に選出されたすべての作品を紹介したいと思います。

掃除機をどこまでかけたかわかるAR 〜自閉症児・者の自立活動への活用〜
ARテクノロジーを、自閉症児・者の自立活動を助け、ひとり掃除機を問題なくかけることができるようにした作品。
活動はもちろん、既存の掃除機にスマホをつけるだけで使える仕組みもとてもシンプルですばらしいとの声も上がっていました。
「一人ですべてを行える」という体験は、きっと被験者にとって大きな勇気を提供していると思います。
1



CHIRO
自分のニーズに応じて、自分自身で機能実装可能なSTEM教育向け卓上コミュニケーションロボット。
OSS思考で機能を自ら実装していけるのでSTEM教育での活用も可能です。
これほどのロボットを個人で作成し、しかも原価3万円というのは驚きでした。
3



CivicTech俯瞰図鑑
アンケート回答のキーワード項目からビックテックコミュニティの性格や得意分野、近しいシビックテックがわかるような「俯瞰図」を作成。
「お互いのコミュニティに関心をもってもらい、こまったときに助け合えるようにしていきたい」という思いがつまった作品。
コミュニティの停滞感を感じた時に次の気付きなどを与えることができそうとの声がありました。
4



coz – Zoomとワンクリックでつながるみまもりカメラ
専用アプリなしで利用できるコミュニケーションカメラ。
Zoomの招待リンクをコピペするだけで開催しているZoom会議にcozカメラを招待することができ、見守りなどにも活用できます。
5



Motion Controller
身体を駆使したMotion Controller。
「子供たちもが夢中になって遊べて、最先端の技術に触れられるにはどうしたらいいか?」そんな思いから創った作品とのことです。
楽しんでる大人の姿を子供に見せることって大切ですよね。
6



リモティー
リモート授業中の学生の感情を画像解析し、教員側へ伝えることで、教員の授業の進行をサポートします。
精度の課題はまだありつつも、ありそうで無さそうな表現を実装した作品の価値を感じるとのコメントがあった作品。
9



新型コロナウイルス感染症相談ボット
無料で利用できる「新型コロナウイルスの相談ボット」。LINEボットの質問に答えていくだけで、『帰国者・接触者相談センター』に連絡すべき状態か分かります。
すでにサービス化もされていて利用者も多く、実用性を含めた完成度とシビックテック度という点では圧倒的だったかと思います。
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審査員


今回の作品のジャッジをしてもらったのは、以下の3名になります。ありがとうございました。
●シビックテックジャパン、CodeforKanazawaの代表理事などで、草の根活動のシビックテックを支え続けている福島さん。
●過去のHLへの応募者でもあり、高専時代からシビックテック作品を多く生み出し、CodeforIkomaの活動もしている、奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科・情報科学領域 助教の松田さん
●Code for Saga代表、Code for Japan理事といったシビックテック活動をしつつ、全国を飛び回っている株式会社ローカルメディアラボ代表取締役の牛島さん
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イベントの様子


審査会の様子はYou Tubeにてすべて見ることができます。


つぶやきもまとめ(togetter)も是非どうぞ!
多様なシビックテックが目白押し!制したのは、、難病患者や介助者向け、書類記述の一部を助けるためのLINE BOT「OneDoc」!!


蛇足


ヒーローズ・リーグのCIVICTECH賞の決勝はいろんな事を考えさせられました。

1つ目は、シビックテックという言葉のイメージ。
ヒーローズ・リーグのCIVICTECH賞の審査基準は「作品が社会をより良くするもの、もしくはそのような活動に貢献出来る作品」としていて、「課題解決」という言葉を使っていません。それは、課題解決だけがシビックテックと思っていないからです。
だからこそ、「Star ☆ Jam Street 〜清掃楽器音楽夢想〜」のような作品も決勝で発表ができると思っています。
この作品は、一見「なぜこれがシビックテックに応募してきたのか?」と思わせる作品です。それは、「課題解決」ではないからです。ただ、作者の思いは「悩みとか生きづらい世の中で、人と人とのいい関係性をどのようにつくっていくのか?が重要でそこに対しての作品だから、これこそがシビックテックと思って応募した」とのことでした。
「シビックテックらしい作品」と言われた時、課題解決、自分ごと…といった言葉がまだまだ強い気がします。マイナスをゼロにすることだけでなく、プラスに変えていく作品も、当たり前にシビックテック作品と受け入れられるような広がりが見えたらいいな。。。と感じました。

2つ目は、課題保有者がテクノロジー活用(アウトプットされたプロトタイプ)をみつけ、発展していくシビックテックの形の可能性。
掃除機をどこまでかけたかわかるAR 自閉症児・者の自立活動への活用」は、今回の活用とは関係なくつくられ、作品がTVで放映されたことをきっかけに問い合わせがあったとのこと。
自分の興味でつくったものが、人の役に立つという発展の仕方が、すごくいいなと思い、そんなシビックテックが増えていったらいいのになと思った作品。
課題保有者は課題をテクノロジーで解決でき、技術者は自分の技術が誰かの役に立つ喜びを覚えることで、次のステップにすすんでいきそうな可能性を感じました。
こういった出会いをきっかけに、シビックテック活動に目覚めるエンジニアも増えていったらいいなとも思いました。
昨年のシビックテック賞の作品のエンジニアもこのように言っています。

「エンジニアの方にも是非障害を持った方と関係を持ってもらいたい。エンジニアとしては得るところが非常に多いと思います。本人も違う職種の方と会うことは良い刺激になると思いますので是非関係をもってほしい。


課題保有者が最新テクノロジーのアウトプットと触れることによるシビックテックの可能性をとても感じた事例でした。
まだうまく表現ができませんが、ヒーローズ・リーグの次のステップな気さえしました。

今回欠席となった「coz – Zoomとワンクリックでつながるみまもりカメラ」も、アウトプットから課題に結びつけたプロダクトの1例です。
「この課題を解決したい」という思いからつくったものではなく、つくることを楽しんで出来上がったもの。そしたら、こんな用途(見守り?)あるんじゃないか?という流れです。

プロダクトアウトなんですが、いわゆる昔のマーケティング用語的意味のプロダクトアウト(大衆ニーズがあった頃)とは意味が変わってきていて、ものがありふれている時代のプロダクトアウトの意味というか。
この2つの作品には、そんなことを改めて考えさせられました。

3つ目は、作品の継続性について。
実は「Star ☆ Jam Street 〜清掃楽器音楽夢想〜」も「掃除機をどこまでかけたかわかるAR 自閉症児・者の自立活動への活用」も、最初は2017年度に応募してきた作品なんです。作品を継続し、発展して再応募してきた作品なんです。
継続していくと新しい発見や気づきがあり、実社会とつながってくるなーと感じたり。ヒーローズ・リーグで応募してきた作品は、継続すると多くの作品がシビックテックになっていくのではないか?と思ったりもしました。

と、考えがまとまってない状態ですが、いろいろと考えさせられた決勝だったなーととりあえず長い蛇足書いてみました。

※この記事は著者がMAブログで執筆した内容をCivicWaveで編集して掲載しています。