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ソリューションを好きになるのではなく、課題を好きになってください
専門家の方がソリューションを好きになるのでは無く、課題を好きになってほしい
何のためのテクノロジーであって、何のための支援であるかということを忘れないで欲しい

本セッションの中盤でFDA理事長・成澤俊輔氏からでたこの言葉は、聞けば当然のように思えますが、忘れがちな「シビックテック」の本質を言葉にしていたように思います。
今回のセッションを通じ、テクノロジードリブン(主導)、テクノロジー有りきで語られるのではなく、課題そのものを好きになり取り組むことの大切さ。そんな当たり前の事をシビックテックに関わる全ての方に知ってほしいと感じました。


セッションの背景

CIVIC TECH FORUM 2017」のインタラクティブセッションの一つのテーマは、「障がい者支援の現場とテクノロジー活用」でこちらのお二人に登壇いただきました。
・成澤 俊輔氏(NPO法人FDA 理事長
・インタビュワー:鈴木 悠平氏(株式会社LITALICO, LITALICO発達ナビ 編集長

障がい者の支援と一口にいってもその対象から、支援内容について様々に存在します。
本セッションでは「就労困難である障がい者の就労支援」に絞り、まずはその現場の話や事例から、テクノロジー活用との関係性について、障がい者の就労支援活動をされているFDA理事長の成澤氏に事例を、発達ナビという国内最大の発達障害に関するメディアの編集長である株式会社LITALICOの鈴木氏に事例の深掘りやインタビューを行って頂きました。

シビックテック活動に従事される方の中には、課題の現場を知る機会が少ない方もいるかと思います。
「テクノロジーを愛さず、課題を愛してください」とセッション途中にでた言葉の通り、テクノロジーを活用できるかもしれない課題をまず知ってもらい、一層シビックテック活動が広がるきっかけになることを期待し本セッションを設けました。
本稿ではセッションに沿って、鈴木氏のインタビューを通じ広げられた成澤氏のお話を要約しお届けいたします。


誰だって働ける、大丈夫だよというのが私の仕事

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「目が見えない・てんかんを持っている・引きこもりの大学時代...。そして今は、NPOを経営し、20名の職員と80名のトレーニングを行っている」と自身を説明した成澤氏。
現在やっている取り組みを紹介してくれました。
 ‐磴い者雇用・多様な働き方を実現したいという企業を50−60社ほどコンサルティング
 年間2,000名ぐらいの 30大雇用(画像)のこういった方と会う(家族、当事者が面談に来る)
 G間150ぐらいの講演
「誰だって働ける、大丈夫だよ!」ということを伝えていくことで、無理心中する家族、小学生の子どもを殺そうとするお母さん、うつ病で自殺しようとする人を止めることができる

そう力強くご自身の仕事について説明いただき、
・20年ひきこもっていても3年トレーニングをすればITの会社で正社員になれる
・50代のおっちゃんで障害を5つもっていても正社員でボーナスもらって働いている
といった事例もご紹介いただきました。



事例の紹介とテクノロジーとの関係性


今までの障がい者の雇用は、人手が少ない所にあてがうマイナス部分をゼロにする取り組みや、「車椅子の方であれば移動が危ないよね」「知的障がい者であれば応用が効かないよね」とリスクヘッジをするマッチングばかりでした。
しかしテクノロジーと就労支援の関係性に対し、成澤氏は
「マイナスをゼロにするのではなく、それをプラスにもっていくのがテクノロジーだったり、強みを活かしたマッチングだったりする。」
と、テクノロジーと就労支援の関係性についてはなし、実際にいくつかの事例を紹介してくれました。

一つ目はテクノロジー企業であるCybozuにテレワーク事例についてのお話です。
「パソコン大好き、ipad持ち歩いていないとドキドキする」と表現をした統合失調症の方は、完全に在宅とすると(他の方と違う働き方になり)ドキドキしてしまうので、「通勤が大変な雨の日や、ダイヤが乱れている時はテレワークとする」という、柔軟なワークスタイルをもって就労のマッチングが行われたそうです。

二つ目はアパマンショップにおける契約書や申込書チェック業務についてです。
発達障害のその方は漢字が大得意との事。住宅や不動産の会社は契約書が沢山あるので、その文言や漢字表現を細かくチェックする業務でマッチングされました。
発達障害の方は目視や監視、デバック等は「気になって細かくチェックをするのはピッタリ」との事です。今後はこのような業務はAIがコンペティターとなるかもしれませんが、画像解析も最初は人手が必要です。そのため、AIとも共存ができると考えているそうです。

三つ目は少し変わってリクルートのコンサルについて触れられました。
リクルートと共同で「ノウビー」という就労支援用のeラーニングの仕組みを作っているとのこと。障がい者の就労支援訓練所は全国に2万箇所、3千の法人があります。しかし、ITの仕事や教えられる人がいないという地域の就労困難者の方は多く、「ノウビー」はeラーニングで勉強でき且つ世界中から仕事をとってくることができるそうです。世界から仕事をとってくれば更に雇用も生まれますね。


テクノロジーを好きになるのでは無く、課題を好きになって!


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3歳の時、難病が発覚したという成澤氏。その後徐々に視野が小さくなり9年前に失明しました。
当時、点字を覚える、白い杖を持つ、音声ソフトの使用を専門家に勧められたそうですが、成澤氏は「何もわかっていない」と感じたそうです。

点字は目が見えない人の8%、手話は耳が聴こえない人の10%しか使えません。
- 点字を覚えてやり取りする相手が居ないから困っている
- 白い杖をついて出かける先がないから困っている
- 音声の読み上げソフトを使って何の情報を得ればいいかわからないから困っている

のです。「専門家の方は、ソリューションを好きになるのではなく、課題を好きになってほしい」と訴えました。
何のためのテクノロジーであって、何のための支援であるかということを忘れないで欲しい(成澤氏)

車椅子の方が階段の下にいたら、10年前であれば若者が集まってみんなで持ち上げ、「お兄ちゃんどこいくん?仕事か?頑張ってな」となっていました。しかし今では、駅員さんを呼んで昇降機を使います。こんな風にテクノロジーによってコミュニケーションの機会が減ってきている気がします。という成澤氏のお話は、テクノロジーの利便性の側面だけをみるのではなく、「いかに課題に寄り添える例を生み出していけるのか」を示唆しているように思えます。


障がい支援の就労支援のリアル


<マネジメントや環境整備などの壁について>
鈴木氏から「例えば、テレワークでも、マネジメントや環境整備、そして公平性についての壁もあるかともいますが、その点はどのように突破されていますか?」という質問が投げかけられ、成澤氏の就労支援におけるルールについてお話がうつりました。

障がい就労者は、バイトやインターン、恋愛などの経験があまりなく、自分の短所長所、得意不得意のようなものを理解する機会が少ないため、「とにかく一緒に探す」とのこと。そして以下2つのルールをもうけているそうです。
.ライアントは1業種1社
⊆卍垢出てこない会社は取引を行わない(最低でも専任役員)

1つ目の理由は、1業界1社このような取り組みを行っていけば、業界内にいいイノベーションがおこっていくことを期待していること。そして、様々な業界で働く機会を得ることができるためです。
2つ目の理由は、会社というのは社長が文化を作るため、経営者からしっかり説明を受けることが重要と考えているからです。

<受入部署とのすり合わせについて>
続いて鈴木氏から、「障がい者を受け入れる段階になった時に、受入部署が決まり、その後、本人を含めたやり取りやすり合わせを如何に行っていくべきか?」という質問が投げかけられました。

成澤氏が行っている就労マッチングでは、自社の訓練所で、2,3ヶ月勤労し、体力や能力などをみてから派遣しています。クライアントのところにすぐに雇ってもらうのではなく、月に一度、週に一度、毎日午前中だけなど、一旦実習期間を介し、その間に好きなことを言ってもらうそうです。

また、「障害を持つ人達は3年で70%離職、精神障害を持った方に限っては3ヶ月で60%辞めます」といったあと、「これだけは覚えていってほしい」と以下の言葉を伝えました。
「障害や就労困難な方は、業務のやり方や待遇ではやめません!」

彼らがやめるのは「お昼ごはんの雑談に入れなかった」「自分だけ時短で帰るのがいやだった」「季節によって体調が変わるのを理解されなかった...」などであり、業務内容や待遇ではありません。
「プラスアルファの理解があるかどうか」が大切とのことです。

成澤氏は実習期間の間に、「うまくいっていたらそろそろ遅刻・欠席しろよ」と伝えています。彼らの心配は、「遅刻しても大丈夫なのか?」といったところであり、業務内容や待遇ではないからです。
そこで、成澤氏は、テクノロジーを使ってその周辺を支援していければ...と考えているそうです。
例えば、アスペルガー障害の実習生A君が暴れたら、紙をあげれば治まります。うつ病の人は会社に来なくなります。1日は無視、2日目はメール、3日目は家にいってください。てんかんの人は、倒れます。
何が起こるかわからないとドキドキしますが、何が起こるかわかっていれば対処に仕方があります。
そういったことをテクノロジーで支援していきたいそうです。


強みを活かす一番いい方法は親に聞くこと


最後に会場から、「精神疾患の方が向いている仕事等について事例を踏まえて教えて欲しい」との質問がありました。
「社員や人の強みを引き出したら良いのか」はよく聞かれる質問とのこと。成澤氏は「その人の強みを知る一番いい方法は親に聞くこと」と力強く回答されました。
ダンボールの組み立てがうまいなど、親は一番一緒にいるため、その人のライフストーリーをすべて見ており、その人自身の物語や強みを知っています。
しかし普通に聞いてしまうと、できないことばかり口にするそうです。「就労は僕が保証するから」と安心させながら、出来ないことではなく、強みを教えてもらっているそうです。


講演のつぶやきまとめはこちらから。臨場感あるので別の角度から講演を知ることができます。
togetter(障がい支援の現場とテクノロジー活用)


グラフィックレコーディング


こちらの講演のグラレコ(by なごやゆきさん)です。
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講演動画


記事をよんで興味を持った方は、是非こちらの動画をご覧になり、生の声をお聞きください。





著者プロフィール:伴野智樹(@tomokibanno
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CivicWave運営メンバーの一人。
MashupAwards事務局/CIVICTECHFORUM事務局