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Local GovTech(ローカルガブテック) 21世紀の自治体として市民中心デザインの行政サービスを提供するために、テクノロジーを活用すること

Local GovTechとは何か?」をテーマにしたセッションのまとめとして、昨年10月東洋経済新報社より刊行された「未来政府 プラットフォーム民主主義」監訳者の稲継裕昭氏をお迎えし、書籍および21世紀の行政についてご講演いただきました。
「未来政府 プラットフォーム民主主義」の原著Citizenvilleは、行政改革の名著、オズボーン、ゲーブラーの「行政革命」を超える、新しい「行革バイブル」とも言われています。

講演はコンパクトではありましたがLocal GovTech(ローカルガブテック)について濃密な情報かつ、わかりやすい解説をいただけました。


セッションの背景

Local GovTechアイデア発祥の地、米国には成功・失敗問わず豊富な事例があるものの、まとまって紹介された日本語の書籍がこれまでありませんでした。2013年発刊の原著CitizenvilleはLocal GovTechをサンフランシスコ史上最も若い市長として実践したギャビン・ニューサム氏が西海岸のビジョナリーたちとの対話をもとに未来の政府の姿を描いた良書です。
「未来政府 プラットフォーム民主主義」は若くしてサンフランシスコ市長に就任したギャビン・ニューサムさんの自慢話ではありません。むしろ、失敗集と呼んでも良いぐらいの苦労話が中心になっています。また、シリコンバレーを近くに持つ都市として、YelpやTwitter創業者など多数のビジョナリーたちに社会と未来の民主主義についてインタビューし著者が考えた内容をまとめた本でもあります。
まとめると、この本は「GovTechを活用する未来の良質な事例集」ということが言えます。

シビックテック分野の名著を是非紹介したく、監訳者である早稲田大学政治経済学術院教授の稲継裕昭(いなつぐひろあき)氏に登壇をお願いしました。
稲継氏は、大阪市職員、姫路獨協大学助教授、大阪市立大学教授、同法学部長などを経て、2007年より早稲田大学で教鞭をとられています。専門は行政学、人事行政学、地方自治論、公共経営論。
米国留学時にCitizenvilleの価値を見出され、昨年10月に東洋経済新報社より「未来政府 プラットフォーム民主主義」として監訳されました。


ガバメント2.0の実現による市民生活の充実

原著者であるギャビン氏の一貫した主張は「ガバメント2.0の実現による市民生活の充実」です。ガバメント2.0とは、才能と知能を持つ人を多数動員し、共同で課題解決にあたる行政の姿になります。(言葉自体はWeb2.0を提唱していたティム・オライリーさんが、行政についてガバメント2.0へ変化するべきだと主張されたのが最初になります。)
従来の行政はこれまで、自動販売機になぞらえられていました。税金を投入すれば、コロンと行政サービスが出てくるという考え方です。しかし、変化の著しい時代になり、財政も逼迫する条件下で市民からの多様な要望に応えることが難しくなってきました。自動販売機モデルからの脱却が必要なのです。
市民が行政サービスに不満をもった時、自動販売機から望みの商品が出てこないときのように、文句を言ったり、たたいたりゆすったりしても意味はないのです。「そんな、自動販売機なんて捨ててしまえ、そして行政はプラットフォームとなるべきだ!」というのがギャビン氏の一貫した主張です。


オープンの2つのやり方

プラットフォーム型の行政、つまり市民参加型の行政(ガバメント2.0)を実現するために必要なオープンというやり方には2つあります。
―祥茲両霾鷂開法にもとづいたやり方、市民から請求があった場合に主にPDFなどで情報を開示する方法
▲廛薀ぅ丱靴筌札ュリティに関わるものをのぞき最初から行政の持つデータを公開していく、オープンデータ型の方法

そしてギャビン氏は、「市民参加型の行政を実現するにはオープンデータ型のやりかたが必須」だと主張しています。オープンデータを公開して、市民や民間がそれを活用しアプリやサービスを開発するべきだというのです。ここで、勘違いしてはならないのが「政府はデータを公開するだけで良い、政府はアプリを決して作ってはならない、政府はプラットフォームたれ」ということです。
iPhone用のアプリは数百万ありますが、99.99%のアプリはApple社以外が制作しています。Apple社はApp Storeとしてプラットフォーム提供に徹しているのです。

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米国内の事例

講演ではこの後、米国内のGovTech事例についていくつか紹介がありました。Data.govChallenge.govメイナーラボ市民参加型予算編成政府版Yelpブルーボタンドナーチューズなどです。紙面の都合上、ここではオークランド市で行われたクライムスポッティングの事例のみ紹介させていただきます。
CrimeMapping

このサービスはマイク・ミガースキというWebデザイン会社Stamenのディレクターが作成したものです。(マイクさんはその後、Code for AmericaのCTOも勤められました)全米でも決して安全とはいえないオークランド市のどこで犯罪が発生したかをオープンデータをもとに地図上に表示するサービスです。もともと、市は犯罪発生データを公表(Crime watch)していましたが、Excel形式での情報で決して見やすいものとはいえません。このデータを元にクリスマス休暇を使って地図上に可視化したものがクライムスポッティング(犯罪発生地点)です。

このサービスは市民からの圧倒的な支持を受けました。人口40万人の都市で年間殺人発生件数400人のオークランドでは必須のサービスとなったのです。この地図を見て、例えば魔のトライアングルと言われるところはどこか、時間帯別の犯罪発生率は?などを知ることで、市民は危険を避けることが出来るのです。
実は、オークランド市はこのサービスが人気になった後、元データであるCrime watchの公表を一旦やめてしまいます。(プライバシー等の点や不動産価値の毀損を心配した人からクレームが入ったのかもしれません)そのため、クライムスポッティングもサービスを停止せざるを得ませんでした。
このことは市民の怒りを呼び、市役所は再度データを公表することになりました。市民の力がデータをオープンにした、とても良い事例だといえます。


さて、あなたの街では

まとめとして、先生はガバメント2.0の実現による市民生活の充実のためには
1.行政が持つ情報を積極的に住民に提供すること
2.提供情報を活用して行政に参加できる仕組の構築
の2点が必要だと指摘されました。

そして「さて、あなたの街では」という問いかけがされました。この時に、
・あったらいいと思うこと
・できること、出来なくても良いからこれから出来ると良いこと
・働きかけの相手方
を考えていくことが大切だそうです。講演最後には、稲継氏のゼミで未来政府を紹介した時に学生さんから出てきたアイデアがいくつか紹介されました。

・ICTを市民生活に利用するアイデア(ウェアラブル端末をもちいた健康管理、政治家と直接対話できるサイト)
・Citizenvilleの考え方を高齢者サポートに活かす(ガラケーを利用する高齢者が公共バスの位置を確認できるサービス)
・アプリYAD(Your Administrative Data) ブルーボタンから得たアイデア、行政のサービスをワンストップで得られる仕組

など、かなりの数が続々と出てきたそうです。今後、Local GovTechの世界でもこういう若い力の貢献が期待できるのはとても楽しみです。


ご興味をもった方は是非、「未来政府 プラットフォーム民主主義」もお手にとっていただき自分たちの理想の未来がどうなるのかを考えてみてください。
また、当日のスライド資料も参照ください。
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グラフィックレコーディング

講演のグラレコ(by はらだひろこ、小海敦子、山上幸美さん)です。
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Local GovTechとは何か?」の前半のセッションの記事もご覧ください。


講演動画

記事をよんで興味を持った方は、是非こちらの動画をご覧になり、生の声をお聞きください。




蛇足

今回、CTF2017開催時まで稲継先生とCTF運営委員の間には何もつながりがなかったのですが、シビックテック分野の名著を是非紹介していただきたいという思いをお伝えしたところ、ご快諾をいただき講演が実現いたしました。当日は早稲田大学政経学部の卒業式と重なりお忙しい中、ご講演をいただきました。シビックテックというキーワードで人がつながる、CTFを運営していてとてもうれしい瞬間でした。




著者プロフィール:柴田重臣
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ネットワークエンジニア。Code for Ibaraki メンバー、CIVIC TECH FORUM 2016運営委員長。Code for Japan設立時にリサーチチームとして参加。米国CfA summmit, Personal democracy forumや台湾 g0v summit へ参加するなど海外シビックテック事例についても研究している。Code for IbarakiメンバーとしてシビックテックカフェやCoderDojo Mitoなどいくつかのプロジェクトに携わっている。