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地域で企業や市民から集めた丁寧な「ディープデータ」は、「ビックデータ」よりも面白い事ができるかもしれない

対談にて太田氏が提示したキーワード「ディープデータ」は、前編記事のキーワード「着眼大局 着手小局」に対するアンサーとも捉えられる考え方でした。

本稿「社会の課題とテクノロジーのギャップ」の後編では、基調セッションに登壇をされたリクルートの麻生要一氏の講演内容と、総務大臣補佐官の太田直樹氏、両者の対談の内容を元に、テクノロジー許容度の地域差等について触れていきたいと思います。

セッションの背景(お二人に登壇をお願いした想い)などは前編記事を参照ください。
・前編記事:「社会の課題とテクノロジーのギャップ(前編)」


テクノロジーを地域の課題に適用しようとした時に必要なのはテクノロジーでは無い



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まずは、株式会社リクルートホールディングスにて新規事業開発に取り組んでいる麻生要一氏より、リクルートが取り組んだ社会課題を営利で解決するためのチャレンジについてのお話です。

リクルートという会社は、社会課題を民間セクターとして解決する事に向き合っています。補助金・助成金・受託 等といったシゴトの仕方ではなく、それらを前提せずに自分達で投資をして、営利を出していくということを地域課題解決でやっていきたいとのこと。
自治体との官民連携もしくは、地域社会との協働で民間セクターとして、事業開発を行っています。

2016年度では行政と連携し事業開発を行う事を模索し、高知県長野県塩尻市と包括連携協定を締結。様々な分野に対する課題解決に対し民間企業としてのスジを探しに行きました。

これら2016年の取り組みを踏まえて、麻生氏が改めて感じたことは1年前のCTF2016で述べた事と同じだったと言います。

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地域をリスペクトし、自分達はよそ者という意識を持ってやることが大切。
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いわゆるITの世界で必要と思われるUI,UXは必要ではない。
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急いではいけない。丁寧に時間をかけてやっていく前提で一つ一つ積み上げていくという進め方が重要。

これらは、前編で太田氏がキーワードとして取り上げていた「着眼大局 着手小局」と同様に、テクノロジーを社会実装して行く際に、大局を見すえながら、小さく着手し時間をかけて行っていくべきという示唆と同じような印象を受けました。


対談:テクノロジーは課題を解決できるのか


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この後は、CIVICTECHFORUM運営委員の幸田氏がモデレーターとして参加をし、対談が行われました。

Q:地域ごとにテクノロジー許容度にギャップがあるという部分、そこをもう少し詳しく(幸田氏)

この問いかけに対し、自動運転のトロッコ問題(事故が避けられない状況下で誰を救うと判断するのか)の例を持ち出した太田氏。
MITはトロッコ問題のシュミレーションを公開しており、アフリカ、中国、イスラム等、世界15カ国、200万人がシュミレーションに参加をしているとのこと。そこで、新しいテクノロジーが社会に許容されていく時に地域差が出るということが研究により見えてきているそうです。
「トロッコ問題の結論は地域が決めるものだと思う」と語り、「国によって価値観が違えば正解はかわり、日本という中でも、その土地の歴史などによって正解は変わるはずだ。」と答えられました。

神戸市の取り組みの件も、阪神淡路大震災の経験から様々な人が参加するという土壌があったこと、神戸で事件があったことから、子どもの安全に対する意識が高いなどの歴史的背景が、今回の取り組みに大きく影響しているようです。

具体的には社会実装していく時は、地域ごとにオープンで、いろんな人が参加するチームが鍵になってくる。(太田氏)



Q:地域ごとにオープンになるデータが違うと、営利企業にとってサービス開発がやりにくくないか(幸田氏)

太田氏:「地域毎に時系列で丁寧に企業や市民から集めたデータ(ディープデータ)は、スケールメリットはきかないが、コスト対効用で言うと、沢山あるビックデータよりも面白い事ができるかもしれない。」

そう回答する太田氏に対し、麻生氏から以下の問いかけがありました。

Q:企業論理からすると数があったほうが営利が出るとなりスケールメリットを目指しやすい。スケールを追わず深く入ることで民間の投資を引き出せるのか?(麻生氏)

太田氏:「いまいまでいうと、規模を追い求めるほうが当然良い。しかし、分散していき、ある程度地域ごとでルールが違うということと、スケールメリットを利かすという二律背反は技術的に解消していくのでは。すごいプラットフォーマーが沢山データを持っている(ということが優位に働く)というのはわりと短期的なものでは?」

と太田氏は締めくくられました。

こちらの言葉は、様々な捉え方ができそうですが、本稿の最後「蛇足」にて個人的に思うことを書いてみました。他にもご意見ある方がいらっしゃれば、ディスカッションしたいところです。


講演のつぶやきまとめはこちらから。臨場感あるので別の角度から講演を知ることができます。
togetter(つぶやきまとめ)


グラフィックレコーディング


ちらの講演のグラレコ(by 松本花澄さん)です。
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講演動画


記事をよんで興味をもった方は、是非こちらの動画をご覧になり、生の声をお聞きください。



蛇足

・着眼大局、着手小局
・テクノロジーを地域の課題に適用しようとした時に必要なのはテクノロジーでは無い
・地域で企業や市民から集めた丁寧な「ディープデータ」は、「ビックデータ」よりも面白い事ができるかもしれない

様々な金言が生まれたCTF2017の基調セッション。

個人的には太田氏が最後の対談で触れられていた「ディープデータ」に対する考え方を興味深く拝見しておりました。

グローバル時代において営利を追求するということはスケーラビリティを求められがちです。
これに対し太田氏は「分散していき、ある程度地域ごとでルールが違うということと、スケールメリットを利かすという二律背反は技術的に解消していくのでは。」とその持論を展開されていた。

様々な捉え方ができそうですが、個人的には「地域毎に時系列で丁寧に企業や市民から集めたデータ」は、その地域のために地域主体で利用さていく。結果、データの地産地消化が進み、プラットフォーマーが持つビックデータに近しいほど大きな価値を生み出していく。そのような未来がシビックテックの領域に訪れる事を期待しております。

残念ながら対談は時間切れでこれ以上深く太田氏の意図を伺う事ができませんでしたが、CTF2017におけるテーマ「民間セクターによるシビックテックへの関わり合い方」についての、1つの可能性を示唆するキーワードだったと思います。

この太田氏のキーワードについてご意見ご見解がある方は、ぜひ @CivicWavejp のtwitterまでご連絡ください!ある程度のご意見をいただけたら、こちらのキーワードで勉強会やミートアップを開催できればと考えております。



著者プロフィール:伴野智樹(@tomokibanno
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CivicWave運営メンバーの一人。
MashupAwards事務局/CIVICTECHFORUM事務局