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自らの地域は自らの手で

2016年8月5日(金)に、ヤフーさん主催の地方創生フォーラム2016が金沢で開催されました。これは、参加者を自治体関係者に限定し、様々な課題の検証や各地域の先進的な取り組みを紹介して共有していくイベントで、今年は全国5都市で開催されています。金沢は初めての開催でした。

今回、恐縮ながらCode for Kanazawaの取り組みや考え方を講演者としてご紹介させて頂く機会を頂き、イベントにフル参加をして様々な気づきが得られました。

最も強く感じたのは、”地域を良くすることができるのは、その地域を本気で愛している人たちだけなんだろうなぁ”ということ。もはや成功事例を持ってくるだけではうまくいかなくなってきている現状で、どこまで本気でその地域のために取り組めるかが、長期的に見てちゃんと成功できている気がしました。
今回は、こういった点を含めて、あくまで福島個人のレポートとしてご報告させて頂きたいと思います。

金沢市に責任と誇りを持っている。でないと、良い仕事はできない



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まず、金沢市の山野市長から「新幹線後の金沢のまちづくり」と題した基調講演。実は、これまで山野市長には何度もお会いしているものの、60分という時間の長いお話を聞く機会というのはありませんでした。そのため、とても楽しみにしていた講演の一つでもありました。

冒頭、新幹線開通後の金沢の状況変化が語られます。例えば、主要観光施設である兼六園は1.6倍で309万人、金沢城は1.9倍で240万人、金沢21世紀美術館は237万人で1.4倍まで増えているとのこと。200万人以上が訪れる観光施設が街の中心部に数多くある都市は珍しいですよね。
外国人観光客も無論急増しているわけですが、台湾の方の伸びがとても大きいそうです。

僕がとてもびっくりしたのは新幹線開通後の支社・支店開設数。いわゆるストロー効果で、金沢にある大手企業の支社や支店は撤退するのではないかと心配されていましたが、実際は逆だったと。開通後、楽天などをはじめ56の支店が新たに開設されたそうです。それほど気にしない僕でも○○が金沢に支社ができたって聞くことが多かったのは、そういうことだったのですね。

次にこれからのことが語られました。
これからの金沢は「本物」と「広域」の二つのキーワードで攻めていくそうです。
「本物」は徹底的に金沢の歴史・伝統文化・魅力を発信していくこと。さらに、新しいものにもどんどん挑戦していき、先人たちの残してくれたものに付加価値をつけていくそうです。
金沢にはたくさんの伝統工芸や文化が残っています。加賀百万石の豊かさの中、歴代の前田家は、軍備ではなく、学術・文化に力を入れたことが大きいです。
また、その後400年以上に渡って、一度も大きな自然災害や戦禍に巻き込まれていないため、古い町並みもそのまま残っています(その日初めて知りましたが、石川県は重伝建日本一で八つが登録されているそうです)。

そういった本物の文化的な都市を残していく施策は、何も今になって始まったわけでなく、金沢はずいぶん前から取り組んでいたそうです。
例えば、金沢卯辰山工芸工房で金沢の伝統工芸を学ぶ研修生たちは、研修費を市に支払うのではなく、毎月10万円の研修費を逆に金沢市から貰っているそうです。今では珍しくない給付金の考えですが、これを始めたのはなんと平成元年!つまり、28年前です。
これは将来の投資になると28年前にこういう英断をされた二代前の金沢市長(江川昇氏)は確かに凄いですね。
人口46万人の都市で本物の伝統文化を残していく本気さが感じられました。
さらに、昨年はユネスコ創造都市ネットワーク会議が金沢で開催されたり、それが縁でつながったフランスのアンギャンレバン市からメディアアートの芸術家を招き、地元作家と共同制作に取り組むなど新しいことにもチャレンジしていくそうです。
「2020年を目処に文化芸術で金沢が世界的な存在感を確立していくことを目指していく」という市長の言葉には力強さがありました。

また、広域という面では金沢市と近隣都市からなる連携中枢都市圏の取り組みとして、「こどもの夜間救急診療所」の整備に取り組んでいくとのこと。市民は生活圏が市内だけでおさまるわけではないので、こういう広域連携は財政面のメリットだけでなく、市民のサービス利便性向上にもつながっていきますよね。
さらに、広域はもっと視野を広く持っているそうで、例えば観光面では広域観光ルートとして、北陸(金沢の兼六園)・飛騨(五箇山、白川郷)・信州(松本城)でインバウンド連携をしているとのことで、とても成功しているそうです。
山野市長は初めて市長に当選して以来、「オール石川で頑張っていく。それがひいては金沢のためになる」と話されていました。まさに今花開いていく感じですね。

市長の「金沢市に責任と誇りを持っている。でないと、良い仕事はできない」と言い切った姿には、グッときました。

少量をいかに価値をつけて限られた人に売るか


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午後の基調講演は、全国でご活躍中の一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事である木下さんの「稼ぐまちの作り方-縮小時代に勝つ自治体の鉄則-」でした。
今年3月のCIVIC TECH FORUMの基調講演もして頂いたときの話もそうでしたが、とても刺激的で得られるものが大きい講演でした。

僕が特に強く共感した内容を箇条書きで記すと…。

  • たくさんの観光客が来たけど、地元にお金が落ちてないというパターンもある。需要が供給を上回っているときが大事。供給量を増やすのではなく、供給の中身を見直すことが実は必要。

  • 国内都市部から地方へ専門性を波及させていくやり方はもう終わり。縮小エリア自ら問題解決していくことが大事。

  • 観光という視点で見たとき、観光客数×観光消費単価 = 観光消費額。供給量である観光客数を増やす話ではなく、内容を見直して消費単価を上げるべき。観光地にはキャパシティがある。供給量を増やしてもキャパシティが耐えられない。

  • あらゆる事業は維持にお金がかかる。建設費の3〜4倍とも考えられる。維持は地元の財政力、経済力で捻出が必要。

  • 入居してもらう人を決めて、その人たちが支払える家賃を考えて、そこから開発費を逆算していく方法が大事。

  • 入居者数が大事ではなく、入居者がどれだけ利益をあげたかに着目する。入居者の利益をあげていくために、営業支援をしていくことが大事。


とにかく自分たちで稼ぐためには、一回こっきりの補助金に頼るだけの仕組みは作らない、それが大事とあらためて感じる基調講演でした。

コミュニティ自身による小さな課題解決の積み重ねを大事に


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また、僕も自治体の皆さまに、「シビックテックによる地方創生」というタイトルで、これからの地域づくりに対するシビックテックの可能性についてお話させて頂きました。
内容は、このCivicWave内で記事になっていることとも重なるため、ぜひご興味ある方はそちらをご覧ください。

今回、シビックテック、特に市民が自分たちの課題意識をもとにどうして自分たちで動こうとするのか、行政の皆さんに知ってもらいたいと思って話しました。こういうやり方もあるんだなと知ってもらいたかったんです。
その上で市民と行政がどう協働していくのか、そういうことを考えていけたらと。
県内の自治体だけでなく、富山や福井からも来られていたそうなので、今回のことがきっかけになって、北陸や日本のシビックテックが熱くなっていったらいいなぁと思います。

自らの地域について考える良い一日に

他にもVISAさんやさとふるさん、そして主催者であるヤフーさんのご講演もありました。今回は内容を割愛させて頂きますが、地域の活性化に役立つ取り組みが多数発表され、興味を持たれた自治体の方々もたくさんいらっしゃったようです(ブースが活況でした)。
残り、8/26に大阪と9/9に東京で開催されるということなので、近隣の方はぜひご参加してみてはいかがでしょう。



著者プロフィール:福島健一郎(@kenchif
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CivicWave運営メンバーの一人。
一般社団法人コード・フォー・カナザワ(Code for Kanazawa) 代表理事、アイパブリッシング株式会社 代表取締役
Code for Kanazawaが開発した5374(ゴミナシ).jpは90都市以上に展開。