pexels-photo-large
お店やイベントなどで、Google Mapの地図を印刷して配っている人を見かけると、「著作権のことあまり理解しないで利用しているんだろうな」と思うことが時々あります。
今回のブログは、ウェブ地図を利用するにあたり、気をつけなければいけない基本的な注意事項がまとめられています。行政サイトで利用する場合だけでなく、ウェブ地図を利用している人全ての人の読んで欲しい内容だったので、飯田さんのブログを読み、お願いして寄稿してもらいました。(鈴木まなみ)

・・・・・・・・・・

昨今、行政のウェブサイトでも、JavaScriptを使用したインタラクティブな地図が使われることが多くなってきました。2016年現在、民間のウェブページでは、動かせる地図を表示することは当たり前になってきています。
施設やイベントの場所を表現するにあたって、ウェブ地図はたいへん便利なツールであり、これからも利用が進みこそすれ、廃れることはないはずです。

もちろん行政においても、サイトにウェブ地図を利用することはこれから一般的になっていくと考えられます。そうした中、行政サイトを構築する際に、いくつかの観点から気をつけたほうがよいだろう、ということをまとめました。

ウェブ地図の表示それ自体は非常に一般化してきたとはいえ、自分のやりたいことと必要な機能、そのための選択肢はまだまだ浸透しているとはいえません。
この文書が少しでも、行政の方々、そしてそれらのサイトを構築する方の助けになれば幸いです。


ウェブ地図を使う際、気をつけたほうがいいこと4つ

今回、行政サイトで地図を利用する際に、抑えて置かなければいけないこと、確認しておいたほうがいいことを4つほど紹介したいと思います。

まずは、抑えて置かなければいけない項目はこちらの2つです。
 |作権、ライセンス
 ∪府からの事務連絡

それぞれの地図サービスには、それぞれの利用規約があります。
組織が当然従うべきコンプライアンスの一環として、それらの著作権やライセンスに沿った利用を行うことが求められます。

そして、2つ目に関しては、2013年に、内閣官房内閣総務官室、各府省ホームページ担当課室、各府省CIO連絡会議担当課室より、「ホームページ等における電子情報の利用について」という事務連絡が出されています。
当時、いわゆる「Google Maps禁止令」として話題になったもので、記憶に新しい方も多いと思います。
(参考:グーグルマップの「利用禁止令」 竹島や北方領土が「日本名でない表記」 政府が自治体などに要請/Huffington Post )

この事務連絡の内容を簡単にいうと「公的な機関であれば、日本の領土は日本の領土としてちゃんと書いてある地図を使ったほうがよいよ」ということになります。
あくまで事務連絡なので法的な強制力はないようですが、留意はしたほうが良いでしょう。

次に、必須というほどではありませんが、事前に確認をオススメする項目はこちらの2つです。
 データ利用料金について
 げ塚兩について
 
Google Mapsなど企業が提供しているプロダクトは一般的に、商用利用であったり、一定の利用量を超えると有償となります。
さすがに昨今、「タダで使えるし、ぜんぶ無料だと思った」というような方は非常に少ないと思いますが、利用できなくなってから慌てるようでは笑い者になるレベルでもあります。

OpenStreetMapでもタイル利用規約の中で、あまりにアクセス数が多くなった場合、アクセス遮断を行うことが明記されています。
OpenStreetMapのタイルは無償で使用できるという認識が一部にありますが、一定程度の利用についてのみとなっています。正しくは共有地であるサーバ資源を守るために、ヘビーユースが禁止されていることに留意ください。

最後は「可用性」についてです。
サイトのサービス要求仕様の中に、ダウンタイムや可用性について言及されることがあります。
地図の表示にはAPIを利用することがほとんどであるため、そのサービスの可用性は検討しておいた方がよいでしょう。
商用の地図サービスのほとんどはこれらの可用性を満たしているはずですが、OpenStreetMapは不定期に、メンテナンスとして1日程度のダウンタイムが設けられることがあります。


各プロダクト(地図サービス)の紹介と注意点

それぞれのサービスを利用する際に注意した方がいいことをふまえつつ、各プロダクトを紹介したいと思います。

<Google Maps>
ウェブ地図のなかで最も有名なこのプロダクトは、ユーザも多く、設置も簡単で、ドキュメントも多い、ウェブ地図といえばまずはこれ、的なポジションになっています。

2013年に話題になった地図の地名表記も、2013年以降、「region=JP」を指定することで、日本政府の連絡内容にあわせた表示を行ってくれます。(あめいさんの記事も参照)
地図のデザイン変更も、若干のプログラミングが必要ではありますが、可能です。

ただ、利用量が一定以上になった場合には有償となり、それなりの金額が必要になります。
(参考: ゴーガ社による価格例ゼンリンデータコムによるプラン紹介

また、Google Mapsの利用規約はわりと複雑で、制限が多いことでも有名です。
例えば、以下のようなことはNGです。
・地図タイルへの直接アクセス(Terms of Service 10.1.a項
・地図画像のスクリーンショットを撮影して、ウェブページに掲載する
・地図画像のスクリーンショットを撮影して、配布物資料に掲載する
・地図を印刷・あるいは印刷物に掲載して、不特定多数に配布・販売する(Terms of Service 10.5.a〜g

基本的な方向性としては、Google Mapsはウェブ地図として使うことを想定していて、なおかつ「地図を使うのであればGoogle Maps APIを設置してね」ということです。
印刷物などの詳細については、Googleによる利用ガイドライン、詳しくはGoogle Maps / Google Earth APIs Terms of Serviceを参照するのがよいです。
(※Terms of Serviceのほうが詳細に書かれています。できるだけこちらを参照しましょう。)

なお、利用規約上はフェアユースに関する文言がありますが、日本国の法域では著作権にフェアユース条項が存在していないため、無効な文言となります。なので、このフェアユースの記載をもとにした利用を主張することはできません。
また、利用規約内の法的通知では、各国で使用されているデータソースに関しての利用規約が整理されています。日本についても3.17項で多くのデータソースが述べられており、(株)トヨタマップマスターや(株)ゼンリンなどのデータに関する注意点が記載されています。

もちろん日本国の法域、という意味では、引用の範囲での画像利用や、個人での印刷物利用など、著作権法上で認められた権利を行使しつつ利用することは問題ないと考えられます。



<YOLP (Yahoo!地図)>
Yahoo!地図を埋め込むためのJavaScriptです。

基本的には無償ですが、アクセス数が一定以上となった場合には有償、というGoogle Mapsに近いライセンス体系となっています。
ただし、有償といっても、値段が安く、日本の細かな事情にも通じたAPIが用意されていて、かなり良心的です。もちろん、ドキュメントも日本語で用意されています。

印刷物に関する規約も Google Mapsと似ており、印刷物の第三者への配布行為は禁止されています。
(参考:Yahoo! Open Local Platformの利用方法 3項および4項)



<OpenStreetMap>
openstreetmap.orgで配布されている地図タイルを、LeafletOpenLayersなどのJavascriptを使って読み込むことで、地図を表示させます。

OpenStreetMapの利用は無償、とよく言われますが、完全に無償というわけではなく、タイル利用規約に従った利用が求められることは前述したとおりです。
具体的な対応として、過度な通信量のアクセスが行われた場合、ブロックが行われ、地図の表示ができなくなります。

そして、OpenStreetMapを採用する際には、いくつか注意しなければいけない点があります。
1点目は、地図デザインの変更を気軽に行えないことです。
openstreetmap.orgの地図デザインの変更は非常に活発に行われていますが、基本色の変更など大幅な変更を気軽に行うことはできません。

2点目は、年に数回、数日間のメンテナンス作業が行われることです。
最近のメンテナンス作業では、地図の編集のみが停止され、地図画像の閲覧・利用は可能なことが多いのですが、他にサーバトラブルなどの理由で不定期に転送速度が遅くなることもあり、注意が必要です。

こうした弱点をカバーし、地図デザインの変更や安定したサービスの提供をうけるにはMapboxCloudmadeのサービスを利用するのがよいでしょう。(両サービスとも元データとしてOpenStreetMapを利用しています。)
もちろん、タイルサーバや経路探索サーバを自分で構築したりすることも可能ですが、自治体でそこまでの構築を行うことは稀だと思われます。

3点目は、国境線と地名表記について、各国が主張するものとは異なるということです。
地図上の地名表記は「現地表記優先(On the Ground)」ルールが採用されています。
(参考:OSM wiki/Disputes, OSMF position/Disputed Territories INformation
このため、openstreetmap.orgのタイルをそのまま利用することで、日本政府からの連絡に反する可能性があり、その対応のためにちょっとしたトリックが必要になります。

簡単な方法としては、地図の表示域を固定することです。
Leafletであれば、maxBound関数などを使う方法を使うことで、表示・移動できる範囲を制限したりすることが可能です。
ちょっと大掛かりな利用方法として、配信されるタイルを入れ替える、という手法があります。
例えば、内閣官房が提供する地域経済分析システム「RESAS(リーサス)」では、一度タイル画像をAWS(Amazon Web Services)に格納し、そのなかで特定の地域のタイルだけを入れ替える、という対応方法をしています。



<地理院地図>
国土地理院もまた、地理院地図という名称で、自身の地図を配信するサービスを行っています。
OpenStreetMapと同じく、LeafletやOpenLayersなどのJavascriptを使用して地図を読み込みます。
データの利用ライセンスはタイル毎に異なりますが、基本となるタイルは国土地理院コンテンツ利用規約(政府標準利用規約2版ベース)で提供されており、かなり自由な利用が可能です。

また、道路情報や建物、水系など、主に利用されているデータは基盤地図情報として配布されています。こちらは絵図ではなく、ベクタデータとしての利用も可能です。
(※基盤地図情報は基本測量成果に指定されていますので、こちらを利用して作成した作成物を公開するには測量成果の複製の承認申請が必要となっています。)

地理院地図は、元となっている公共測量データの性質上、データ更新が基本的に、5年毎の単位となりますが、最近では高速道路や公共施設といった局地的な建物や建築物に対する更新が非常に早いことでも有名です。

国のサービスということで、ダウンタイムも非常に少なく、Githubを通じて改善要望をあげられるなど、技術的にも制度的にも、非常に面白い試みが行われています。
「使い回しのしやすい部品としての地図を提供する」という観点は、ともすればパッケージ化されて使いづらくなってしまいがちな公共機関のサービスに比べ、圧倒的な利便性を誇っているといってよいでしょう。

惜しむらくは、地図デザインに好き嫌いが分かれそう、というところでしょうか :)



<その他の地図サービス>
もちろん、日本地域だけを見ても、さまざまな地図画像配信サービスが存在しています。
それぞれの会社ごとに、異なる観点からの地図デザインや機能が盛り込まれており、用途に応じて使い分けることは非常に重要です。

挙げているときりがないので、ここでは割愛します。



ここまでインタラクティブな地図利用について書いてきましたが、CMSの都合などでウェブ地図を配置することが出来ない行政の方もいらっしゃるかと思います。
その際のオススメは、OpenStreetMapの画像スクリーンショットを撮って、画像として配置することです。
これは、openstreetmap.orgの画像タイルのライセンスが CC-BY SA 2.0だからこそできる技です。
ただしその場合、画像のどこか、あるいはその近くに (c)OpenStreetMap contributorsという著作権表示を行い、その文言から http://www.openstreetmap.org/copyright に対してリンクを貼るようにしてください。



━━蛇足━━━━━━━━━━━━━━━━━
余談ではありますが、Google Maps APIと、LeafletやOpenLayersなどその他の地図表示スクリプトから呼び出して良いタイルには若干の注意点があります。

具体的に言うと、LeafletやOpenLayersから、単純にGoogle Mapsを表示させることは、タイルへの直接アクセスの禁止という制限のため規約違反です。
逆に、Google Maps APIを使ってOpenStreetMapや地理院地図のタイル画像を表示させることは問題ありません。
「LeafletやOpenLayers独自の機能やプラグインを使いつつGoogle Mapsを表示させたい!」という場合には、”ちょっとした注意が必要" ということです。

回避策として、LeafletではGoogle Maps表示用のプラグインが用意されており、こちらを使うことでGoogle Mapsへのアクセスが可能です。
このプラグインは、Leaflet上でレイヤを切り替えた際に、Google Mapsを表示している間は、そのコントロールをすべてGoogle Maps APIに切り替える、という動作をしています。
ありていに言えば、プロキシとして動作するものです。


※この記事は著者がqiitaで執筆した内容をCivicWaveで編集して掲載しています。




著者プロフィール:飯田哲(@nyampire
10533560_728335087245668_9065503808194015020_n
日本情報経済社会推進協会 電子情報利活用研究部 主任部員、およびオープンストリートマップ・ファウンデーション・ジャパン副理事長。
本記事の記述は個人としての発言であり、所属する組織の見解を示すものではありません。