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「人の役に立つというのは、生きていくことにおいて、とても大切」

製品だけをみていると製品の完璧さや綺麗さにのめり込みがちです。しかし、人の空気感を取り入れることで、本当に必要なモノが見えた!という事例を、今回はご紹介したいと思います。

前編「テクノロジーを暮らしの中で利用してもらう工夫」では、課題が先にあり、それを解決するためのテクノロジー活用の工夫について紹介しました。後編は、そんな体験を経た肝付町が、これから取り組んでいこうとしている「共創のまち・肝付」事業について、肝付町役場に勤める中窪悟さんと能勢佳子さんのお二人にお話を伺いました。

肝付町の人口ピラミッドは総務省がだしている2060年の日本の人口ピラミッドとそっくり。つまり、50年後の日本の未来が肝付にあります。
そんな未来のまち肝付では、IT機器や介護ロボットなどに代表される製品の共同開発や実証実験・検証のフィールドを提供する事業を2015年7月から行なっています。
とはいっても、まだ具体的な事例はなく、現在水面下で取組中とのこと。

ただ、キックオフイベントでPepperを市民の方に触れてもらうことで見えたことがありました。
それは、日頃、人から助けられている”だけ”の人達が、「がんばれ!」っと、人を応援できる立場になることで、活きる力につながるということです。


50年後の未来がある街「肝付町」

現在の肝付町の人口ピラミッド(左図)をみてください。20代が少なく半数が、50代以上の高齢者です。一方、2060年の日本の人口ピラミット(右図)をみてください。似てますよね?
つまり、50年後の日本の未来がここ、肝付町にはあります。そんな「肝付町」で、「共創のまち・肝付」という事業が始まっています。
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 左図「肝付町2010年人口ピラミッド/出典:統計メモ帳
 右図「日本国2060年人口ピラミッド」/出典:国立社会保障・人口問題研究所ホームページ


「共創のまち:肝付」とは、IT機器や介護ロボットなどに代表される製品の共同開発や実証実験・検証のフィールドを提供する事業です。フィールドをただ提供するだけでなく、一緒に作り出していくことで、地域にとってもメリットのある形で進めていきたいと語ります。
中窪さん:地域にとってのメリットは、わかりやすいものでは、開発したサービスを無償もしくは安価で提供してもらうなどあるかもしれません。しかし、いろんな開発者の人がきてくれて、街の人と交流がうまれること自体がメリットだと考えています。

能勢さん:一緒に考え、一緒に成長した製品が生まれれば、その製品が全国的に利用されるようになった際、肝付出身のITサービスとして、いつまでも応援すると思うんです。そう、まるで肝付出身のスポーツ選手かのように。

お金が先に動くとお金の切れ目が縁の切れ目となってしまいます。そうではなく、一緒に創りだしていき、開発者達や、ITサービスと継続的な関係を築いていきたいと語ります。
また、「肝付という名前をしっているテクノロジー系の人達が増えていくと嬉しいな」と思っているそうです。


人の役に立つことが、生きる力を与える!?

「共創のまち・肝付」のキックオフイベントの一つで、介護現場にPepperを連れて行き、アプリを試してみるというイベントを行いました。しかし、そのイベントで実験として連れて来たPepperは1時間動きませんでした。
エンジニア達は冷や汗をかいていたけれど、お年寄り達には、とても大きな変化がみえました。

Pepperが動かなくて焦るエンジニア達に、お年寄り達は、「がんばれ!大丈夫だよ!」と声をかけはじめたのです。そして、その声援は、エンジニアに対してだけでなく、Pepperに対してもかけられました。
何も出来ないPepperを「助けてあげなきゃ」と、車いすから立たなかった人が立ち上がって踊りを教えるなど、「どうにかしてあげたい!」という思いがその場に溢れました。
そして、Pepperがうまく動いた時はみんなで喜びました。
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みんなが同じ気持ちになった時、認知症も車いすも気にならない空間がそこにはできていました。
福祉用具として使うとなると、安全性など、完璧なものが求められますが、コミュニケーションだからこそ、不完全な方がよかったことに気付かされました。
能勢さん:日頃、人から助けられている”だけ”の人達が、「がんばれ!」っと、人を応援できる立場になることで、活きる力につながる。
そんなモチベーションにつながるだけで社会貢献だと思います。

このイベントを通して、人の役に立つというのが、生きていくことにおいて、如何に大事なことなのかを実感させられたそうです。

開発者の方が試したかったことは試せなかったかもしれませんが、それ以上に、Pepperが介護施設でできることを教えてもらったのではないでしょうか?


暮らしの中で、活きた技術に進化させる「肝付町」

肝付町では、Pepperの事例のように、開発する人が街にくることで、課題側の視点にたった気付きが得られます。製品だけをみていると製品の完璧さや綺麗さにのめり込みがちです。しかし、人の空気感を取り入れることで、本当に必要な物が見えてくるはずです。

前編の「テクノロジーを暮らしの中で利用してもらう工夫」で書いた通り、暮らしの中にはいってこなければ、それは活きた技術ではありません。肝付町には地元の方から信頼されている保健師の「能勢さん」がいます。ITについてで実証実験をすることで、開発者の方たちには、暮らしの中での活きた技術に進化させるメリットを提供できます。

能勢さん:人のためにテクノロジーを極めたい人達と、生きてきたことを誰かの役に立ちたいと思っている高齢者とマッチングは、うちの街ができること。
ただ、単に実験の場とされるのは嫌で、共に成長していきたいと思っています。

共に成長していき、一緒にサービスを創りだしたという空気が、高齢者の「生きがい」になると考えているそうです。
Pepperが肝付に来たことで、テレビなどでPepperがでると、肝付町のおばあちゃん達は
「あの子、まえに肝付にきた子だねー。がんばってるかねー?」
と、まるで近所の子どもが都会に巣立って成功したかのように、親しみを持って話しているそうです。

前編で紹介した「テレビ電話」の導入をする際、お年寄りの方たちは最初、利用を拒否しました。
その理由は、「もうすぐ死ぬ自分達のためにお金をつかうなんてもったいない」というものです。
しかし、次のように説得して利用してもらったそうです。
「将来日本は高齢化社会をどの町も迎える。50年後の未来をいっている肝付町で先に実験することは、近い将来同じような問題を抱えた人達を救えることになる。その人達のためにTV電話を使ってもらえないだろうか?」

自分達ではなく、誰かのためであればやる人達です。
誰かの役に立ちたいと考えている人が多いのです。

都市で生まれたサービスアイデアを、田舎で育てていくことで「育ての故郷」ができる。自分のサービスに「故郷」ができることは、開発者側にとってもとても心強いことだと思います。


テクノロジーを受けれ入れてもらえる土壌がある「肝付町」

肝付のいいところの1つはテクノロジーを受けれてもらえる土壌が既にあるところです。
その要因は3つあると思っています。

1つ目は、地元の方のテクノロジーに対する拒否反応が低いところです。
ITふれあいカフェでipad講座を開催していたり、ホイールマップなどの地図をつくるイベントなどを開催しているため、地元の方のテクノロジーに対する拒否反応は比較的低いです。

2つ目は、ヘンタイ職員(テクノロジーの可能性に期待をもつアツい職員)が2人いることです。
地元の方と仲の良い保健師の能勢さん、ITに詳しい中窪さんという2人のヘンタイ職員のバランスも一つの特徴かと思います。そして、能勢さんが現場に近い保健課と、テクノロジー施策実施担当の企画調整課を兼務していることも、大きな要因かも知れません。

3つ目の、最後が一番大事なのですが、このヘンタイ職員2人が、自分達(地元の人)にとって面白いものをもってきてくれるいう信頼関係を築けていることです。

能勢さん:この人が来た時には、面白いことをするという関係性、わからなくても非難されない。安心して「わからない」が言える関係性。
こういった温まっている場がないとなかなか地元の方にはうけいれてはもらえません。

テクノロジーの人はおしゃれで、横文字をよく使い、インテリっぽい感じがして、なんだか距離を感じるそうです。そんな人が急にきて、現場(暮らしの中)でサービスを利用してほしいと言ってもなかなかうまくいきません。

肝付をただ単に実証実験の場として使うのであれば、あまりメリットはないかもしれません。
ただ、テクノロジーを「活きた技術」に進化させたいのであれば、町のひとと一緒に考え、一緒に成長させていきたいと考えるのであれば、肝付はとてもいい実験の場かもしれません。

そしてきっと、解決したい課題以外の社会貢献も感じることができるのではないでしょうか。
是非、肝付で実験をし、「あのサービス肝付出身なんやでー。わしらが育てたんやでー」
っと自慢させてあげてください。


━━蛇足(めんどくさいこというよ)━━━━━━
中窪さん(トップ写真でPepperを支えている人)のヘンタイ職員度について少し書かせてください。
中窪さんが東京に来た時でした。せっかく東京にきていて、時間があったので、「誰かに会いたいな...」と、CIVICTECHFORUM2016で出会った方に、当日突然のアポイントをとったそうです。
「15:30以降ならいいですよ。それでは、15:30に青山1丁目の事務所で!」
っと地図を送付されたので、そこに向かう中窪さん。しかし、様々な「コト」に遭遇します。
  電車を逆方向に乗ってしまう
 ◆無事、駅につき地上にでましたが、その道を逆方向に歩いてしまう
 :Pepperがたくさんいるスポット発見(時間に遅れるためスルー)
 ぁД謄好蕕鮓つける ←この時の時刻は15:30

約束の時間にテスラを発見してしまうんですね。15:30以降なら大丈夫とはいわれているものの、約束の時間なんですよ。でも...中窪さんは衝動を抑えきれなかったんです。
Pepperがたくさんいるスポットはがまんしたのに、テスラはがまんできなかったんです。
「ちょっと試乗してきてもいいですか?」
というメッセージをアポイント相手に!時間的に次の約束があるわけではなかったので、約束相手は
「それは乗らないと!」
と返信。そして、テスラ試乗後、約束の1時間後にやっとその方とMTGを始めたそうです。

もともと、目的があったMTGではなく、情報交換のMTGだったのですが、テスラに興奮しすぎて、テスラ試乗の感想について語りまくったそうです。
そのMTG相手は、
 ーこんな行政職員なかなかいない。変わってるでしょw。
と思ったそうです。

おもちゃをみたら遊びたくなる子どもと変わらないこの「好奇心」!

頭キレキレの行政職員が「ヘンタイ」とよばれることもありますが、ビジネスの世界に入ったらヘンタイでもないことは多いです。
ただ、中窪さんのような人は、どの世界にいてもいい意味で「ヘンタイ」と呼ばれ、想像の域を超えた何かを生み出しそうな予感があります。
中窪さんみたいなヘンタイ職員にもっと会いたいです。