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Social Impact Day2016のイベントページ

6/14に開催されました「Social Impact Day2016ーいよいよ動き出す社会的インパクト評価の未来ー」に行ってきました。当日発表された内容のうち、個人的に興味がわいた点についてかいつまんで共有したいと思います。

「社会的インパクト評価とは」については、先に公開している「社会的インパクト評価イニシアチブの設立が発表」のエントリーを参照ください。

本エントリーでは当日登壇をされた、イギリスのNew Philanthropy Capital(NPC)のTris Lumley氏による「社会的インパクト評価 世界の潮流」の発表内容と、社会的インパクト評価のアプローチの種類について共有したいと思います。
これらの体系だてられたノウハウは、社会的インパクトを生み出すための非営利組織の経営マネージメント手法、ある種のMBAのようなものと感じました。

シビックテック活動のうち、特にノンプロフィット、コミュニティ活動に属するような内容においては、今後これらの導入を検討していくことで、活動がブラッシュアップされ、支援者支持者を更に獲得していく可能性もあるのではないでしょうか。


インパクト評価は誰のもの?10年進んでいるイギリスからの示唆

基調講演「社会的インパクト評価 世界の潮流 」New Philanthropy Capital(NPC)のディレクターTris Lumley氏の講演より内容を抜粋します。
NPCとは、ロンドンにあるフィランソロピーキャピタル。社会的投資分野におけるエクイティ・リサーチ・ファームとして機能しています。

当日後半のパネルディスカッションにて、10年進んでいると表現されたイギリスの社会的インパクト評価の状況について、Tris氏からは以下のように、直近の潮流を説明を頂きました。

・インパクト評価を実施する団体が増えつつある
・増加に合わせ、より厳格で適切な利用のされ方に変化してきた
・社会的投資と評価によって生まれる「エコシステム」をきちんと作っていくことが重要

少し重い資料で古いものですが、100のNPOや社会的分野の起業家に対し、NPCが行ったアンケートのまとめがこちらにあります。 →MAKING AN IMPACT

当日はこちらの資料よりいくつか抜粋して説明を頂きながら、イギリスにおけるインパクト評価の潮流や学びを共有頂きました。
以下、簡単にエッセンスを記載します。

●約70%のNPOが自分達の活動のインパクト評価に取り組んでいる。しかし多くの団体はインパクト評価のために「共通ツール」しか使っていない(共通ツールはそれぞれの活動に必ずしも適さない)

インパクト評価で得られるベネフィットのトップは「サービス改善に役立つ」(客観的な評価はサービスの改善に最もつながる)。次に、 「活動をより良く報告できる」「 資金をより集められた」の順番で高いが、各団体がインパクト評価に踏み切った理由のダントツトップは「資金提供者側からの要望」。そのため、資金提供者側の要求に応じようとし、結果的に「インパクト」につながらない、組織運営的な活動に従事せざるを得ない事も多い。

●「インパクト」につながるためには、コレクティブ(全体的な)なゴールに向け、それぞれの役割りに応じた評価を心がけないとならない。トップダウンに(マネージメントされた)評価を実施する事も重要だが、ボトムアップに活動のコンセンサスを得ていく事も重要で両者のバランスが大切。(評価される事の意味を、組織全体で考えなければならない)

社会的インパクト評価を浸透させていくためインフラに投資をしなければならない。グッドプラクティスを集めたり/オンラインで簡単にできるツールを作ったり/それらが正しく運用されるかを注目したり。これらのエコシステムを構築、整備していくことが今後は重要。

また、何のために評価するか という問いかけを何度も何度も行う、Tris氏の姿がとても印象的でした。
「評価を行う事は重要だが、資金提供者側の論理だけでは、必ずしも社会的インパクトを増大させる結果につながるとは限らない」
という示唆は、イギリスが10年経験をしてきた社会的インパクト評価の表と裏を示してくれたように思えます。

市場経済にも同様な事が言えますが、資金提供者側と調達側が、同じ(コレクティブな)ゴールに向けて常に目線を合わせていけるか...。
社会的インパクト評価イニシアチブの今後が期待されます。


社会的インパクト評価のアプローチの種類

「社会的インパクト評価の "価値" を語る」セミナーにて、水谷衣里氏(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)が説明された、「社会的インパクト評価」のアプローチについて簡単にご紹介いたします。
「社会的インパクト評価」には大きく分けて以下の4つの評価モデルがあります。

Logic Model
資源と活動(アウトプット)、成果(アウトカム)をつなぎあわせ事業が成果を上げるために必用な要素を体型建てて図示化したもの。図の形式は決まっておらず、これらの構成要素を表にまとめたものや構成要素を矢印でつなぎあわせたものが一般的。

Theory of Change
課題や問題が引き起こされている構造・原因と、それを解決するために変化の法則を図示化したもの。

RCT
Rndomized Controled Trialの略。介入を行うグループと行わないグループとをランダムで振り分け、両方のグループのアウトカムを比較することで介入の効果を検証。

SROI
費用便益分析の手法。活動がもたらした便益について、経済的な収益だけでなく、より幅広に社会的価値も含めて評価をする評価手法。社会的価値を貨幣価値に換算したうえで、費用対を算出。

Logic ModelやTheory of Changeは、事業の計画・設計段階にも実行段階にも評価段階にも利用できるもので、「組織内外のステークホルダーに事業の目的や方法を明確に説明できること」「ステークホルダー間で共通理解の醸成が可能になること」などがメリットとしてあげられます。
RCTは、社会的インパクトを最も厳格に計測可能な評価手法ですが、いずれの組織にとっても取組みやすい手法。RCT 導入の最大のメリットは、厳格な評価が可能になるという点とのことです。

これらの4つの手法について、それぞれの評価指標における事例と特徴や、実際の評価シートなどが、内閣府NPOホームページの「社会的インパクト評価に関する調査研究」の中で公開されています。興味があれば(少し量が多いですが)是非ダウンロードして御覧ください。

ボリュームが多い!という方には、まずはこちらの2つをご覧いただくのがいいかもしれません。
国内事例調査:社会的インパクト評価に関する調査研究より
「LogicModel」と「アウトカム」を決めるためのマニュアル:社会的インパクト評価イニシアチブより

シビックテック分野で、これらの応用を検討していく事が、今後は求められていくと感じました。


まとめ

これらの体系だてられたノウハウは、社会的インパクトを生み出すための非営利組織の経営マネージメント手法、ある種のMBAのようなものと感じました。CivicTech活動のうち、特にノンプロフィット、コミュニティ活動に属するような内容においては、今後これらの導入を検討していくことで、活動がブラッシュアップされ、支援者が更に増えていく可能性もあるのではないでしょうか。

ただ、Tris氏が繰り返し伝えていたように、これらのツールやフレームワークを活用する事を目的とするのではなく、それぞれのNPOや団体が目指す世界を実現するための社内社外におけるコミュニケーションツールとして活用する事を忘れないようにしなければなりません。

ともすれば日本はイギリスのように、紆余曲折を経て(経験を踏まえて)「社会的インパクト評価」のフレームの導入が進んでいるわけではありません。
形からはいるのではなく「なぜ評価を導入するのか?」の本質を理解しながら進んでいく必要があると思います。

イギリスと比較し国内の環境は、資金提供側の多様性不足や、評価・研究団体の不足など、必ずしも同じ状態だとは言えません。

環境が異なる中で、
 ー本当に必要な選択肢を現場レベルで選んでいけるか
 ーインパクト評価のエコシステムを構築するために、この分野を広く開けていくことができるのか
といった今後が問われると感じるとともに、国内シビックテックにおける状況は更にそれよりも多くのポイントで足りていないと、危機感を強めたイベントでありました。