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「こんな機械が、実際に家まで食べ物を届けてくれる時代まで長生きできて良かったな」

ドローン宅配を活用した、シニアなど買い物難民を支援する事業を展開するMIKAWAYA21のドローン宅配実証実験中に、地域のシニアの方からでた言葉です。

新しいテクノロジーは高齢者の方には受け入れがたいイメージがありますが、やってみてわかることも多いですよね。実際にやってみることは、課題もたくさんみえますが、こういった嬉しい発見もあったりします。


セッション背景


CIVICTECHFORUM2016」の「テクノロジーを活用したシビックテックの最前線」のセッションは、筆者でもある私(伴野)がコンテンツチェアを担当しました。多くの方に新しいテクノロジーを活用したシビックテックビジネスの可能性と今の課題を感じてもらいたい!と企画し、新しいテクノロジーやサービスモデルをシビックテックの現場で実践しているプレイヤーよりショウケースとして3名の方にお話いただきました。

今回ご紹介するMIKAWAYA21株式会社の鯉渕 美穂氏のドローン宅配のお話は、やってみたからこそわかる課題を惜しみなくシェアいただき、実践することの大切さを学んだように思います。


高齢者のちょっとした困り事を手伝う「まごころサポート」


ドローン宅配事業の展開としてとして注目をされるMIKAWAYA21ですが、そのメインとなる事業は「まごころサポート」と呼ばれる新聞販売店支援事業。
その根幹は「子どもからシニアまで安心して暮らせる社会」という想いから成り立っていると冒頭でお話頂きました。


「地方には、草刈りが大変、高いところに手が届かない、電球交換や重たい家具の移動などで困っているシニアの方がいます。子どもや孫が近くに住んでいればすぐ頼めます。でも、こういったちょっとしたことをわざわざ人にお願いするのは気が引けます。だからこそ、” 不便だな" と思っても、我慢してしまいます。そんな人達のために、地域に必ずある新聞販売店の方が、何かあったら30分500円で手伝いますよ!というサービスが ”まごころサポート" です。(鯉渕氏)」

MIKAWAYA21は、これらの「まごころサポート」を運営する新聞販売店に対する後方支援を行っており、地域の人にチラシを配る事や、営業時やサービス提供時のスタンス、家にあがる時に靴下を履き替えるなどの細かい指導など、必要なTIPSを伝えています。

「私たちは、実際に支援に伺うわけではなくサポートをしています。先に名前を伝えたり、どんな用事できたのかの要件、作業にかかるおよその時間などは必ず伝えてください。などちょっとしたことですが、育成というか、必要なTIPSを伝えています。
また、顔をだして地域の方に訴えることも大切です。おじいちゃん宅で写真を撮影したり、お掃除場合は、掃除前と掃除後の写真を撮影するなどの、毎月の活動報告のサポート(版下作成)しています。(鯉渕氏)」


こういった、小さなことの積み重ねが、安心感を生み出している重要なポイントだと感じました。また、新聞配達員の余剰リソースをうまく活用しているモデルも、素晴らしいですね。


雪だるま式に増える高齢者のお困りごとを解決したいと考えた結果のドローン宅配


総務省の発表では買い物難民は700万人で、現在も尚増え続けています。高齢者の方が地域で不便に持っている事の17.1%が「日常のお買い物」。「人に頼むのは申し訳ないけど、ドローンが運ぶのなら頼みたい」そんなシニアのちょっとしたニーズを「最新のテクノロジーによる、あたたかいサービス」で実現したい気持ちから、ドローン宅配に辿りついたそうです。

「まごころサポートは現在311のエリアに広がっており、ひとつの販売店で2,3千世帯をカバー。
多いところだと月200件、1日5件程度のサポートを行っていて、毎月5000〜6000の全国のお困りごとを解決しています。そしてこれは雪だるま式に増えていますが、一方で新聞販売店の人は増やせないという問題があります。何か解決できる方法は無いかと考えた結果、ドローン宅配サービスに辿り着きました(鯉渕氏)」


最初は、皆がなんとなく不安と言っているから、シニアの方も家の上にドローンを飛ばされることを嫌がるんじゃないかと思っていたそうです。ただ、実験にドローンを飛ばしてみると、協力してもらった84歳のおじいちゃんから、思いがけない言葉がでたそうです。

「こんな機械が、実際に家まで食べ物を届けてくれる時代まで長生きできて良かったな。って地域のシニアの方がおっしゃてました(鯉渕氏)」

新しいテクノロジーは年配の方には否定されがちですが、必ずしもそうではないですよね。

ドローン宅配についての詳しい説明は、こちらの動画をご覧ください。



「ドローン宅配」実証実験で見えてきた5つの課題


ドローン宅配実現のための実証実験は、ドローン開発メーカーと、ドローン特区に指定されている自治体(徳島県那珂町)との三位一体で行われました。
徳島新聞の販売所から80歳のおじいちゃんが住んでいる家の畑までの約500メートルを、地上50メートルの高さでドローンを飛ばし、食パンを届ける実験を行いました(食パンは賞味期限が短いのでしょっちゅう買いに行かなければならないため)。
これらの実証実験より見えてきた課題5つをご紹介頂きました。

1.オートパイロット
今回は目視をしなければならないという航空法の元の運用であったため、
 ・ホバリングさせる
 ・車に乗り込む
 ・途中からオートパイロットに切り替え
 ・リモコンを持つ操縦者がオープンカー(電波が通じやすい)追随
といった過程をこなさなければいけませんでした。
これでは人が運んだほうが早いと感じたそうです。

2.安全な離発着
開けている場所でも電線、引き込み線、木々などの障害物があります。また、離発着の技術はとても大変。
機体自体の進歩も必要ですが、周囲30m以上周囲が開けていることを前提とする航空法の改正も必要。

3.安心な飛行の実現
今回の実験ではドローンの航路に誰もいない状態で飛行していたが、実際には難しいこと。
シニアの方からは「家の上を飛ばしてほしくないのではなく、時間帯を指定したり、音を鳴らしたりして事前に知らせてほしい」という声も上がっていたとのことです。

4.シニアにも使いやすいサービス
今回はスタッフが離発着時の荷物の取り外しなどを実施しましたが、その意外の注文システムも含め、シニアにも使いやすいオペレーションシステムの開発が必要。

5.安価でのサービス実現
インフラであるドローン機体だけで数百万、またこれを整備管理するランニングコストを、「まごころサポート」だけで賄う事はできません。
土砂崩れなどが起こった時に、地域毎にドローンを抱えるという話があるので、インフラ自体は災害対応のために各自治体に入れて頂き、ランニングコスト部分を一部負担するなど、他の目的と合わせて安価に運用する方法を検討しています。

最後に実証実験を繰り返しながら2018年に実用化するべく用意を進めていきたいと、意気込みを力強く語られました。

本セッションは、鯉渕氏の他にも以下の2名の方に登壇いただきました。
・前田 諭志氏 株式会社デザイニウム 代表取締役「SORACOMを利用した除雪車位置情報把握システム
・山本 文和氏 株式会社otta 代表取締役社長「ビーコンを使った街での見守りサービス

グラフィックレコーディング


こちらの講演のグラレコになります。
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講演動画


記事に書ききれないことも多いので、是非動画もご覧ください。