マイクロソフトのブログ Microsoft On the Issuesに、シビックテックの分類学についてのエントリが上がりました。シビックテックを考える上で、参考になると思いますのでここで紹介させていただきます。

元ブログ:
Towards a taxonomy of civic technology|シビックテックの分類学確立に向けて(マイクロソフト公式ブログ、2016年4月27日)」(作者マット・ステンペックさんに翻訳許諾を快く頂きました)

4月末にスペイン・バルセロナでEU圏を中心に1000人近くの参加者を集め、シビックテック・インパクト・カンファレンスが行われました。そこでPersonal Democracy Forumを主催するミカ・シフリーさんとCivic Hallのプログラムマネジャー、エリン・シンプソンさんの「シビックテックの”分類学”」についての発表がありました。

シビックテックの分野は今まさに羽ばたこうとしている状態で、大きな変化が起ころうとしています。そこで、より多くの人に理解してもらい、実際に役立つ変化を起こし、その影響を理解するためにもシビックテックの”分類学”を確立しようとしているのです。

考えていることは4つです。
1.シビックテックの定義
2.シビックテックの技術的要素分類
3.課題についての社会的プロセスの研究
4.本質を見極めるための多様な視点

1.定義はあえて広く定めています
”シビックテックとは公共に役立つテクノロジーの活用”
シビックテックという言葉は行政、政治、街づくり、コミュニティ、ジャーナリズムなど複数の分野を包含するものです。また、オープンソース文化や行政の透明性向上、規制や監視なしのインターネット利用など近接した領域と密接に結びついています。
以前は独立していた各分野が、テックを媒介に結びつき市民参画やエンパワーメントなど、課題解決への新しい挑戦を行っています。具体的なひろがりはシビックグラフを御覧ください。
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2.技術的側面
統合された新しい領域であるシビックテックではあらゆる技術が活用されます。そこでテクノロジーについて実際に利用されている機能を元にカテゴリ分けを行いました。カテゴリ例は、こんな感じです。
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リストはまだ不完全ですし、なくなるテックもあれば、これから開発されるものもあるでしょう。なお、特定領域(子育て、教育、福祉など)のみに利用されるものは外してあります。それはシビックテックとして全てに含まれた挑戦だからです。もちろん、失敗事例も成功の元と考え、大切に集めています。


3.社会的プロセス
もし、技術的側面までだけで思考を停止ししまえば、単なるまとめであり分類学とはいえません。シビックテックは単なるツールやプラットフォームではなく、そこに人々が関わっているものです。そのため、テックを組み込んだ社会プロセスや評価方法を考える必要があります。人々を集め、関係を保つ仕組も結果を出すために必要なのです。そこにはハッカソンやオープンソースプロジェクトのように新しいものから、従来からの地域の集まりのようなものまで含まれます。
人を集め、情報を共有し、何かを作り、情熱をかきたて、ドキュメントにまとめ、支援する。それぞれにいろいろなやり方があります。
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リストは全てではないですが、シビックテックで人を結びつけている方法がどれくらいあるかを知ることが出来ます。


4.シビックテックの評価
A.シビックテックがいろいろな分野で成功を収めていることは間違いありません。ただ、ではそれがどれくらいの影響を実際に社会にあたえているのかを考える必要はあります。サービスを評価する場合、FixMyStreetを提供しているMySocietyのトム・スタインバーグさんによれば、「サービスのユーザーは誰」で、「支払をしているのは誰なのか」という軸で考えるのが良いとしています。シビックテックは利益を追求しないことも多いため、ここには行政や公益ファンド、企業CSRなどの関係者も入ってきます。また、お金の流れだけではなく、関係者の間の関係も見ることが出来ます。マイクロソフトのエリザベス・グロスマンによれば、ここに「誰が運営しているのか」の視点も加えたほうが良いとしています。この中には「誰が作り」「誰がメンテしているのか」が含まれます。これらの視点による評価で、成功しているシビックテックが何を目的にしているのかを明確にします。

B.もうひとつの問いとしては、シビックテックがどの程度の変化をもたらしているかです。ここではトニー・ロバーツの提唱する枠組みが役立ちます。変化には既存の枠組内だけで行うもの、枠組み自体の改革、新しい枠組みの提供の三段階があります。シビックテックで考えれば、既存の仕組をデジタル化するだけ、効率よい仕組の提供を志向する、全く新しいサービスを生みだすのどれかになります。

C.最後の問いとしてはテックの利用度合いです。それは3つにわかれます。
1つ目は既存のプラットフォームにシビックテックのアイデアを埋め込むシビック・フィーチャー(機能)。例えば、検索エンジンサイトに選挙の候補者一覧が載るというようなものです。
2つ目のシビック・プロダクト(製品)は、みなさんがシビックテックとしてイメージしやすい単体として課題解決に提供される製品やサービス。
3つ目のシビック・エクスターナリティーズ(外部性)は、元々はその意図を持って開発されたわけではなかったのに、シビックテックに利用されているもの。例えば、Twitterによる気軽なコミュニケーションは透明性や公共との連携を強化しています。ここにはもちろん負の外部性もあり、Twitterによるヘイトスピーチやいやがらせなどもあるのです。

以上です。

「シビックテックの分類学については皆様からのアイデアやご意見をお待ちしております」とのことなので、アイデアやご意見のあるかたは、是非マイクロソフトさんの作成しているドキュメントに貢献してみてください。(英語です)