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「シビックテックの哲学なんて僕には語れません」

「ローカルにおけるシビックテックの哲学」というタイトルのセミナーの、登壇者である西本氏の冒頭のセリフはこの言葉でした。セミナー後、もうひとりの登壇者である柴田氏がこんなことをいっていました。

「シビックテックのようにこれまでに形がないものを成そうとするときは、ついつい、べき論で語る人が多くなりがちです。理詰めで視野が狭くなりがちな中で、西本さんのようにこだわらず勝手にやってく姿勢は良いなと感じました。哲学なんかなくても楽しくやれる。理解するより、楽しくまずやってみるのって良いなって。(柴田氏)。」

何事も動き出さなければ何も始まりません。まずは自分がひとりでもできることで、すぐに始められることであれば勝手にやってしまう西本氏の考えに対して、勝手にやっていくことは、車輪の再発明になる可能性もあり、地域活動においてあまりよくないのではないか?と個人的に思ったりしました。ただ、やってみて気付くこともたくさんあるので、自分の視野が狭かったーなと、改めて気付かされたセッションでした。
みなさまは、今回のセッションをきいて、自分なりの哲学に関しての気付きはありましたか?


セッションの背景


CIVICTECHFORUM2016」のローカルセッションの一つである「ローカルにおけるシビックテックの哲学」は、実践を続ける行動 for 会津のメンバーでもあり、株式会社デザイニウム オープンデータ推進員の西本浩幸氏が登壇されました。その依頼意図を、セッションチェアの柴田氏は以下のように語っていました。

「西本さんの言葉で語られる中から、ローカルのおけるシビックテックの役割、シビックテック活動に対する哲学を考えてみたい。トライアンドエラーを繰り返し、変化する中で見えてきたものは何か?決して譲ることの出来ないシビックテックの志(こころざし)とは?
課題が山積し、課題先進国と呼ばれる日本におけるシビックテック活動で、ともすれば見失いがちになるシビックテックの哲学を参加者みんなで考えるきっかけとしたい。(柴田氏)」



名称を変え、様々な地域課題をテーマにイベント開催したら、人が集まり、活動が起こり始めた


西本氏は、会津の活動をきき、会場の皆様の活動と重ねることで、それぞれの中でシビックテックの哲学を導いて欲しい旨を伝え、会津の活動の説明に入りました。

「地方なのでたくさんの課題があります。それがどんどん表面化されてきているのが地域の辛い所です。課題は単体で存在しているわけではありません。表面下では関わりあっているので、一つ解決しようとしても、また別の課題がやってきます。
そういった様々な課題について、最初から地域の方々と話し合える場ができたわけではありません。(西本氏)」




最初のCODE for AIZU時代の際に、オープンデータカフェを10回開催したけれど、気付いたら限られた属性だけの集まりとなっており、市民が気軽に参加できる場になっていないという問題意識が生まれたそうです。そこでイベント名を「オープンカフェ会津」とし、団体名も「行動for会津」として開催することにしたとのこと。名前を変えることで、以下の様な効果があったそうです。

「オープンカフェ会津にイベント名称を変え、地域の課題を話し合う場としたら、沢山の人が集まり、活動が起こり始め、更に違う活動につながりだしました。
また行動for会津というのは、地域の人達に対して自分たちが何者なのか?をわかりやすくしただけでなく、活動の集まりということも表してくれている名称だと思っています。
会津は、人をくくってグループとか組織にする気は全くなく、市役所の仕事とか、お店の仕事とか、好きな活動とか、それぞれの活動がゆるやかに結ばれていればよく、その集まりの総称としてすごくいい言葉です。
CODE for AIZUともいってはいますが、CODE for AIZUのために活動しているわけではなく、地域を良くしようと思って活動をしているので、実際に活動している時にはあまり気にしてないです。ただ、こういったテックの人が集まるイベントの発表の際には名前を使わせてね。ぐらいです。(西本氏)」


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そして、会津で勝手に起こっている活動の数々を紹介してくれたと同時に、別々の活動でありながら、ゆるやかに結ばれている会津についても説明いただきました。
OpenStreetMapFukushima・・・自由に作成・配布が可能な地図をみんなで作成(地図のWikipedia)
OpenAppLab・・・会津大学の学生に場と技術を提供し修行してもらう活動
ジョセササイズ・・・除雪はエクササイズなんだ!と展開している西会津の活動
OpenStreetMapは、行政が市民に配布したハザードマップでも使われるという実績を残しており、その地図のデザインは民間企業が関わっていたりします。OpenAppLabも大学だけで閉じた活動でなく、地元の民間企業が場所や講師派遣などをしているそうです。

また、オープンカフェ会津の役割としてこのように持論を語られました。

「オープンカフェ会津は、民間や自治体などの人の行動を対流させ、いくつかある活動をぶつける場だと思っています。(西本氏)」



オープンカフェ会津では、地域の人に興味を持ってもらえるテーマ名を気にしているようです。

「本当は空き家のリフォームについて話し合いたかったけれど、そのテーマだと協力者が少ないと思ったので ”ゲストハウス” というテーマにして集まり、興味があったらすぐに参加できる口を設けました。
また、学生が開発した除雪共助アプリ "さすけね" を市内で使いたいと思った際には、アプリを使ってみよう!だと来る人が限られるので、"除雪をテーマにして考えよう” というテーマで人を集め、アプリを紹介しました。(西本氏)」


テーマ名以外でも、地域の人を講師に呼んで地域の人と接点をつくるなど、オープンカフェ会津での工夫については、こちらの記事でも詳しく書かれていますので参照ください。
 ⇒ITとローカルコミュニティとは融合する!?/CODE for AIZU(前編)

最後に、自分が活動する上で意識してることと、今後やりたことについて語られました。

「自分的に意識していることは、,修譴召譴やりたいことをやる活動と活動をぶつけてみるI澣錣魏爾欧道臆端圓梁人誉を高めることです。
今後やりたいと思っていることは.咼献優垢坊劼る事例を作ること△發辰塙く市民にリーチすること7兮嚇なプロジェクトを一つすることです。(西本氏)」


今回お話いただいた資料はこちらからご覧いただけます。



組織は大きくしたくないし、プロジェクト化もしない、ほぼ自然任せの会津


後半はCodeforIbarakiの柴田氏(+会場)からのQ&A形式のトークセッションとなりました。

活動をしていくと、いつの間にか手段が目的になってしまうことはよくあります。しかし、CODE for AIZUは
・問題を抱えている人のために活動するので、テックにはこだわってはいません
・プロジェクトは増えたらいいなと思いますが、組織が大きくなる必要はないと思っています
・イベントで気にすることは、集客人数ではなく、結果がでているかどうか?です
など、手段が目的化されてなくていいなーっという印象をうけました。

また、活動しはじめた人に対するサポートがコミュニケーションの中で自然とされているのは、活動だけのつながりではなく、普段から交流があるんだろうなーと感じました。近所のスーパーでたまたま会うとか?Facebookで頻繁に投稿されているとか?(ここは筆者の妄想です)
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Q:シビックテック団体といわなくてもいいのでは?(柴田氏)
A:テックに強い会津ですが、それがなければいけないわけではないので、CODE for AIZU(シビックテック団体)といわなくてもいいと思っています。ただ、テックな事例は作っていきたいという気持ちはあります。今のように活動を起こしていく際に、テック部分はそんなに必要ないと思っています。
CODE for AIZUのために活動しているわけではなく、問題を抱えている人のために活動するので、テックにはこだわってはいません。(西本氏)


Q:組織って、影響力をだせたり、運営が楽になるのなどの思い込みもあって、組織を大きくしたいという気持ちが自然と出てくる気がします。そういう気持ちはないですか?(柴田氏)
A:関わる人が増えて、発生していくプロジェクトが増えたらいいなとは思いますが、CODE for AIZUは大きくなる必要はないと思っています。(西本氏)

Q:オープンカフェ会津をとおして、活動と活動をぶつけるというのが印象的でしたが、オープンカフェは有効なやり方だと思いますか?シビックテックの団体は、アイデアソンをして、マッピングパーティをして...とイベント好きにも一見見えます。イベントをすることに満足してしまって成果がでてこないことも多い気もしていますが、オープンカフェは何故効果があったんでしょうか?(柴田氏)
A:オープンデータカフェよりも幅が広がった結果をみると、有効な理由はあったのかなとは思います。なるべくいろんな人が来れる設定をしたことがよかったのかな。
オープンカフェは繋げたいからやっていますが、繋がるだけだと難しいので刺激を与えたりもします。熱量を持っている人がぶつかると新しい物がでやすいので、手段としてはオープンカフェである必要はなく、打ち合わせしませんか?でもいいと思っています。(西本氏)


Q:その場で熱量ある人がぶつかれば、次に繋がると思いますが、人数はどのぐらいで実施されていますか?(柴田氏)
A:無理に集めないで10名とか。少ないと6人とかもあります。回数ごとに人が減っても気にしません。(西本氏)

Q:では気にするポイントはどういったところですか?(柴田氏)
A:こんな課題があるのでオープンカフェで話したいという人が来た際、解決できたかどうか?については気にしています。結果がでているのか?については気にしているので、後日、聞けるタイミングがあれば聞いています。結果が出ているほうが、自分のやりがいもあるので。(西本氏)

Q:プロジェクト化とかしていますか?ヘルプなどしながら、強制的な進め方をしていますか?(柴田氏)
A:最初の頃はしていましたが、最近はしていません。本人は毎日活動したいけど、他の人は他の活動もあるので無理な時もあります。責任を押し付けてしまう形は反省点でした。(西本氏)

Q:組織は大きくしたくないし、プロジェクト化もしない、課題解決の場合は自然に任せるほうが成果がでやすいという実感がありますか?(柴田氏)
A:全てに顔をだしているわけではないので、把握はできません。ただ、要所要所で顔を出し、サポートすることもあります。定期的にチェックしているのではなく、たまに声をかけるぐらいです。そしたら、人を紹介してほしいなど相談されることもあり、その時にはもちろんサポートしています。
(西本氏)


そして会場からはこんな質問がされていました。
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Q:勝手にやるという話がありましたが、高校生を巻き込むって結構難しいハードルかと思います。巻き込む方法においてコツなどあれば教えてください。(会場質問)
A:Facebookに投稿をして、自分の活動を発信すると反応してくれる人がいます。もっとコメントがほしくなった時には、巻き込みたい人をタグ付けしてコメントを求めたりもします。SNSを活用すると便利ですよ!(西本氏)

Q:ボランティアでやる範囲と、ビジネスとしてやる範囲とどのように切り分けをしていますか?(会場質問)
A:こういったシビックテック活動自体にお金をかけすぎてもいけないと思っています。人をつなげたり、アクションにつなげたりに専念しているので、かかるのは場を借りるお金ぐらいです。ただ、実際にその場で対流がおこってつながり、次に進み、そこから生まれるアウトプットに対しては投資したいと思っています。
それができるのは、団体や企業や自治体かもしれないですが、自分は会社としてシビックテック関連アプリには投資していい立場にあります。すべての地域でそれができるとは思いませんが、ボランティアだけで消耗しない形がいいとは思います。(西本氏)


Q:CODE for AIZUは外部出身者が多く会津出身の人が少ない気がしますが、そのあたりはどのようにお考えですか?(会場質問)
A:よそ者だけで盛り上がっていると、勝手にやっているなと地元の人に思われ関わってもらえないので、そこは地元の方に関わってもらえるような工夫をしています。地域の人を尊敬し、オープンカフェで話をお願いしたりしています。(西本氏)


最後は、西本氏から柴田氏への逆質問をぶつけていました。

Q:柴田さんが活動されている源泉はなんですか?(西本氏)
A:子どもが生まれて保育園に入れたいと思った際、空きを探す工程があまりに非効率な現実をみたんです。全部の保育園に電話をかけ空きをきいたのですが、これがホテルだったらありえないなと。一方保育園側も空きができたらリストの上から電話をかけている状況でした。それを改善しようとする動きをCode for Americaがしていたので興味を持ち、Code for Japanに参加したシビックテック活動をはじめたきっかけです。そして、こういったシビックテック活動に参加したら、いろんな関係ができたり、考えやキャパシティが広がったりしました。継続して活動している一種の源泉は、そういった自分への投資なのかなと思います。(柴田氏)

その言葉を受けて、西本氏も

「シビックテックは自分を成長させる部分がありますよね!(西本氏)」

と同意していました。

シビックテックのような動きが必要になった一つの背景として、行政が今までと同じようにまわらなくなったので、自分たちでなんとかしなければ!という考えがあります。ただ、個人的には、そのようなマイナスをゼロにするような考え(しょうがないからやる)ではなく、仕事ではなかなか味わえなかった自己成長に触れることができて逆にラッキーなのではないか?(関わることができる)といった捉え方ができることも、活動を継続する源泉の一つの答えなのかなっと思います。「楽しさ」などのプラスの感情が源泉にあると、継続されやすいですよね?

西本氏の話でもよく登場していた、会津大学の藤井先生に、実は以前同じような質問(何故シビックテック活動をしていますか?)をしたことがあります。その時の答えはこんな感じでした。

「消費者として生きていくはつまらないですよね。でも、地域に関与する事は、生産なので楽しいです。そして、やればやるほど関与できる領域は深まっていきます。地域の活動は手頃なサイズなので、アクションしたらすぐ反応があるのも楽しさの一つです。単位が広くなると反応が遅くなるのでつまらなくなるだろうと思っています。(藤井先生)」

違うセッションで話されてた会津若松市職員の目黒氏も楽しく活動されている様子が伺えました。会津は楽しみながら活動している人が多い点も、活動がうまくいっている要素の一つなのではないでしょうか?

みなさまも、これをセミナーをきっかけに、ご自身のシビックテックの哲学について考えていただければと思います。

グラフィックレコーディング


こちらの講演のグラレコです。
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講演動画