26118574365_980715f10c_z

アメリカは新しいキーワードが生まれると、メディアが生まれ、カンファレンスが生まれ、大きなムーブメントとなる

日米の違いをしっかり意識しながらも、日本でもシビックテックは持続可能なのか、ビジネスとなりうるのか、について語るトークセッション。個人的に一番印象的だったのはこの言葉。

「街で掃除してるおじさんの活動ってなかなか広がらないですよね。なぜって、日本はアイデアから一気に行動(ムーブメント)に飛んでしまい、自分の活動をブログで発信するとか、コミュニティを作ろうとかしないから、広がるはずがないですよね。(柴田氏)」

行動することは一番大切なことですが、その行動を発信をすることで仲間を集め、コミュニティをつくっていくことは、継続的に活動を続けるために、とても大切なことだと訴えていました。CivicWaveというこのメディアも、各地の活動を発信することで、その人達の仲間をあつめ、継続的に活動できるお手伝いができればいいな、と改めて思いました。


セッションの背景


CIVICTECHFORUM2016」のビジネスセッションの一つである「米国シビックテックをめぐるエコシステムとコミュニティの可能性」は、ソーシャルカンパニーの市川裕康氏のセミナーと、Code for Ibarakiの柴田重臣氏と2人のトークセッションという2部構成でした。このセッションの目的を、セッションチェアの柴田氏は以下のように語ってくれました。

「米国ではシビックテックについてすでに相当数の実践が行われノウハウがたまってきています。特に2015年は新しい成長産業分野としてとらえられ、投資家やアプリ開発者をひきつけ投資も相次ぎ行われました。しかし、このようなエコシステムも一朝一夕で築かれたわけではありません。
シビックテックにつながるeガバメント、Gov 2.0からの流れをふりかえり、現在のエコシステムを構成している全体像をつかみながら、まだ幼年期にある日本のシビックテック・エコシステム構築についての議論を深めたいと思っています。日米の違いをしっかり意識しながらも、日本でもシビックテックは持続可能なのか、ビジネスとなりうるのか、について語りたいと思います。(柴田氏)」



シビックテックの分類


まず最初は市川氏より、シビックテックの全体像をつかむためにも、アメリカのナイツ財団のレポートを元にしたシビックテックの分類について、サービス例と一緒に説明されました。3年前のレポート(2013年のレポート)にはなりますが、シビックテックとはこういうサービスのことかと、想起しやすくなると思います。
大きく、オープンガバメント関連とコミュニティ・アクション関連の2つに分けられていました。
「*」は直接説明のあったサービスになりますのでスライドなども参照ください。

<オープンガバメント関連カテゴリ>
Data Access & Transparency(データアクセスと透明性):Socrata(行政用オープンデータプラットフォーム)
Data Utility(行政データの分析・可視化):*Code for America(エンジニア派遣)
Public Decision Making(住民による意思決定):LocalOcracy(地域課題への実名意思表示サービス)
Resident Feedback(住民からのフィードバック):*SeeClickFix(住民レポートシステム)
Visualization & Mapping(視覚化とマッピング):Azavea(地理空間情報可視化サービス)
Voting(選挙・投票)・・・Turbo Vote(投票率向上をねらった選挙情報提供サービス)

<コミュニティ・アクション関連カテゴリー>
Civic Crowdfunding(公共分野のクラウドファンディング):neighborly(地域特化型金融支援プラットフォーム)
Community Organizing(コミュニティオーガナイジング):Change.org(著名サービス)
Information Crowdsourcing(情報のクラウドソーシング):waze(渋滞・道路状況共有サービス)
Neighborhood Forums(近隣住民のためのフォーラム):*Nextdoor(地域特化型SNS)
Peer-to-Peer Sharing(生活者同士のシェアサービス):Airbnb(民泊サービス)

そして、

「米国のシビックテックサービスは、ビジネスとしても大規模調達がされているものも増え、エコシステムとしても成熟しつつある。(市川氏)」

とアメリカの現状について説明されました。セミナー中に紹介された、シビックテック関連の100の企業リストはこちらになります。↓
Introducing the GovTech100: Civic Innovation’s Next Phase


つながりがムーブメントを生む。それにはまずは発信を!


アメリカはプロジェクトやカンファレンスに携わることで、仲間やネットワークができ、そこから大きな流れを産んだ事例をあげながら、アイデアからムーブメントになるまでのSTEPについて説明いただきました。

「アメリカは、手を上げてアイデアを叫び、よければみんなが集まり、アソシエーションになるという文化を持っています。会社を休職して大統領選挙などの公共的なプロジェクトなどに関わると、おなじ釜の飯を食べている感覚になり、仲間やネットワークが生まれ、それが大きな流れにつながります。
例えば、2014年米医療保険改革の柱であるユーザー資格が限定された公的健康保険申込サイト「HealthCare.gov」がオープン直後にクラッシュしたトラブルの際、オバマ・キャンペーンで活躍した技術者が次々にリクルートされ、その後ホワイトハウスでのキャリアチェンジをする大きな流れにつながったという事例があります。
また、Personal Democracy Forumというカンファレンスは年に一度ですが、カンファレンスを運営している団体が、開催されるカンファレンスとカンファレンスの間の1年間にもみんなが集まれるように、コワーキングスペースを作ったりもしています。カンファレンスやコミュニティは、同じテーマに興味のある人とリアルに会うことで、思わぬキッカケが生まれる可能性を秘めています。(市川氏)。」

DSC_0107

「ムーブメントにするには、キュレーションしたり自身のブログなどで発信してメディアをつくることから始め、おなじテーマに興味のある仲間とのオンラインコミュニティをつくり、次にオフラインで会うMeetupを開催して、学びのコミュニティを作っていくことで、徐々にムーブメントになっていくのではないでしょうか。
そのためには、こういった場でハッシュタグをつけてつぶやくだけでもいいので、まずはカジュアルに自分のアイデアを発信してほしいです。そして、同じ興味を持つ人とつながり、少人数でもいいので集まって...そんな動きがいずれ大きな流れになると思うので、そんなアクションがもっと広がってほしいです。(市川氏)」


今の時代、TwitterやFacebookなどのSNSにより、知らない人と繋がることへのチャンスはぐんと広がりました。ただ、発信をしなければ見つけてもらえません。そういったツールを使わなければ見つけることもできません。ITの得意な分野の一つは、時間や距離を超えて繋がることができることだと思います。今発信したことが、半年後に、北海道に住むあの人に届き、繋がるかもしれません。何が起こるかわかりませんが、まずは情報発信をはじめてみてください。そして同じ興味を持つ人とつながり、集まってみてください。情報を発信することで人生がかわった経験がある自分としては、みなさまにも是非体験してもらいたい世界です。


活動を継続させるための燃料の一つはコミュニティ


次に、市川氏と柴田氏のトークセッションにて、なぜ日本はバズワードで終わってしまい、ムーブメントにならないのか?について深掘りしていきました。

「このままCIVICTECHの流れをとめずに続けていくのはどうしたらいいのでしょうか?情熱だけで3年ぐらいはもつとおもいますが、そろそろ情熱だけだとやってられない時期に差し掛かってきている気がします。このあと、どんな燃料をたせば継続されるのか?お金?地域の人の喜び?その一つが同じ目的で動いている人と会うこと、そういった場であるコミュニティを作ることだと思っています。(柴田氏)」

と、継続するための燃料の一つに関してコミュニティ作りをあげ、

「地域でゴミを拾っている人たちの活動などは、全然広がらないですよね。それはアイデアから一気に行動(ムーブメント)にいっているからだと思います。先ほどの市川さんのサイクルの中にあった、発信部分を何もしていません。ブログを書くこともなければ、おなじ目的をもった他の地域の人達と会うこともしないし、コミュニティを立ち上げようともしません。それでは大きくなるはずもないですよね。大きくムーブメントを作ろうとしたら、発信やコミュニティはとても大切です。
「保育園落ちた日本死ね!」のブログについて考えても、たった1本のブログで政府が動こうとしています。あれも、ブログというテクノロジーをつかったシビックテックの1つの事例だと思っています。
情報発信の力は意外と侮れないです。ネットでもつながり、リアルでもつながるという、両側面があると、雪だるま方式にひろがっていくのではないでしょうか?
実は、自分が所属しているCode for Ibarakiも情報発信ができてません。活動するだけで疲れてしまうんですよね。でも発信をしなければ広がりは生まれないですよね...と反省しています。(柴田氏)」


と、ムーブメントとして広がらない理由として、活動するだけで疲れてしまって発信していないことを自責の念も込めて語っていました。
DSC_6754

その言葉を受け、市川氏も

「会ってない人との思いがけない出会いのツールがたくさんありますよね。例えば、Twitterのハッシュタグもその一つです。ハッシュタグで同じことに興味がある知らない人を見つけることができ、カンファレンスなどではちょっかいだせば直接知り合うこともできます。そこから何か生まれるかもしれません。
米国は、そういった知らない人と合うコミュニケーションツールの使い方がとても上手いです。日本はそれをうまく使わないところはもったいないところだと思っています。
単純な使い方を含め、デジタルリテラシーの向上というのも大切であり、コードをかかなくてもできることはたくさんあります。(市川氏)」


コミュニティを作るための最初の一歩が発信であり、アメリカはその点が長けていると伝えていました。知らない人との偶発的な出会いは大切で、FORUMなどのイベントは仲間を見つける場でもありますが、偶然横にいる人と話すだけでなく、自身の情報発信とうまく組み合わせて活用すべきだなと感じました。


シビックテックは小さなものが大きくなっていくもの


最後に、私が印象に残った言葉をもう一つ紹介したいと思います。

「2年前にCode for America Summitに参加した時に、自分たちのことを紹介するシビックテック団体フェアがあり、そこで暇そうにしている人にどんなサービスなのかをヒアリングして回っていたことがありました。そのうちの一つに「ミュニレント」という、自治体間の重機のレンタルをやっているサービスの話をきいたのですが、従業員は2人だし、画面も見せてもらいましたが結構しょぼいんです。当時は大丈夫かなー。この会社。なんて思いましたが、今は大きなシビックテック会社になってます。
そのことから、シビックテックって小さなものが大きくなっていくものなんだなーっと感じました。大きなことは大きな会社でしかできないわけではなく、ちゃんとしたアイデアがあり、ちゃんとやっていけば大きくなっていくものなんだと思います。(柴田氏)。」


シビックテックは、最初から大きなことをするのではなく、小さなものが大きくなっていくものという柴田氏の言葉は、個人的にしっくりしました。ナイツ財団が上げているシビックテック例として大きなシェアを占めているシェアリングサービスの1つであるAirbnbも、最初はSXSW期間にホテルがないという小さな問題解決からはじまって今に至ります。アイデアが凡庸で、最初のサービスがへぼくても、地道に行政に話をして歩き、少しずつ信頼関係を積み上げ伸びていったミュニレントの事例は、シビックテックらしく、とてもいいなと感じた事例でした。


市川氏の講演スライドはこちらからご覧いただけます。



グラフィックレコーディング


こちらの講演のグラレコです。
DSC_0131

講演動画


ご興味をもってくださった方は、記事にしきれなかった部分もありますので、是非講演もご覧ください。